本研究では、深層学習を用いた病理画像分析手法を開発した。膵臓がんのモデルマウスであるKPC マウスからサンプルした病理組織画像の全スライド画像 (WSI) を用いて手法を実装。KPC マウスで観察される膵臓の異常は、ヒトの病理学的特徴と類似している。WSI からランダムな画像パッチを作成し、深層学習をもとにした畳み込みオートエンコーダーのフレームワークを使用して、これらの画像を高次元の潜在空間の表現に埋め込む。分類モデルの学習においては教師データとなるアノテーションの作成がボトルネックとなるが、本研究では「情報最大化」手法を応用した教師なしクラスタリングの手法を適用して細胞組織の画像の自動的な分類を実現した。さらに、非線形次元削減手法である UMAP を用いて、潜在空間における画像情報の分布を可視化した。教師なしクラスタリングにおいては最初に定義するクラスタの種類数が分類のパフォーマンスを大きく制限するが、本研究ではクラスタの分類を評価する指標であるXie-Beni インデックス、Calinski-Harabasz インデックス、C インデックス、Hartigan インデックス、Dunn インデックス、および Mclain-Rao インデックスの 6 つの評価指標を用い、グリッドサーチにより最適なクラスタ数を決定した。本研究のモデルは膵臓がんの病理組織画像を対象としているが、提案手法はより一般的な組織画像の解析に利用することが可能であり、高解像度の病理画像における細胞組織の分類をもとにして異常検出など医療従事者が診断を下す際の見落としを防ぐなどの診断支援に活用されると期待できる。
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