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2022 年度 実施状況報告書

微細血管網認識システムの開発と医療用微細針の自動穿刺機構への応用

研究課題

研究課題/領域番号 21K12114
研究機関関西大学

研究代表者

鈴木 昌人  関西大学, システム理工学部, 教授 (70467786)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード医療器具 / 低侵襲性治療 / 自動採血 / 無痛針 / 採血器具
研究実績の概要

【針穿刺位置の自動決定システムの開発】昨年度の研究の成果として得られた血管の自動認識システムを利用して、自動針穿刺装置に必要な針穿刺位置の自動決定システムを開発した。このシステムは画像処理を行うためのライブラリであるOpenCVを利用して作成された。このシステムにより、血管の存在する領域から①一定以上の直線が続く部分で、かつ②針のθ方向の振り幅が小さくて済む位置を特定する。針のθ方向の振り幅を小さくするのは、針穿刺時の最大ストローク長を大きくとるためである。人間の上腕を対象として本システムの性能を検証した結果、適切に針の穿刺位置を自動決定することに成功した。
【針自動穿刺システムの開発】4軸(xyzθ)の自動ステージを用いて針の自動穿刺システムを開発した。本時ステムは、カメラ画像からリアルタイムに血管を検出し、針穿刺位置の決定、針の移動、穿刺までを自動で行う。今年度は、装置を構築し、針の移動と穿刺を行うシステム(ソフトウェア)を開発した。また、看護師が注射/採血の練習に用いる腕模型を対象として、針の自動穿刺を行った。結果、針の移動および穿刺動作(直線的に針を前進/後退する動作)を行うことには成功した。しかし、実際に腕模型に針を穿刺することには失敗した。これは針を直線的に前進させるだけでは適切針を穿刺できないことを示している。今後はより適切な穿刺動作を行えるようにシステムを改良していく予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

昨年度は新型コロナウイルスの流行に伴う生産物流のトラブルにより針の自動穿刺システムに必要な精密自動ステージを調達できないという問題が発生し、研究の進行が遅れていた。
今年度は上記問題が解消し、概ね当初の予定通りの研究成果を達成できた。研究計画にて開発目標としていた、血管の自動認識システム、針の穿刺位置決定システム、針の自動穿刺機構の内、前2項目についてはその開発が概ね完了した。残る針の自動穿刺機構についても、機構の構築および基本システム(針の移動および穿刺の実行)は完了した。
ただし、針の穿刺においては、ただ針を前進させるだけでは適切に針を対象に穿刺できないことが分かった。これは、人間の針穿刺動作を適切に模倣できていないこと、我々が使用する針が低侵襲性治療用の細い針であることが理由であると考えられる。
我々は細い針でも対象に穿刺を可能とする技術として、針を回転させながら穿刺する技術を有している。そこで、本研究で開発中の自動針穿刺システムにも針を回転させる機構を追加することを予定している。

今後の研究の推進方策

研究目標の達成に向けて、個別に開発してきたシステムの統合を行う。カメラ画像から穿刺対象の血管位置を抽出し、これを基に針穿刺位置を決定、針の穿刺までを一連の動作として自動的に行うようにシステムを構築する。穿刺対象として専用の腕模型を使用し、模型中に埋め込まれた血管を模したチューブから疑似血液を吸引することを目標として実験とシステムの改良を繰り返す予定である。
上記目標を達成できた場合、残りの研究期間を用いて動物実験を行う予定である。ラットを対象として、その腹部から血液を採取することを目標に実験を行う。血管位置の抽出、針穿刺位置の決定も含めた所要時間60秒以内の採血完了、ならびに採血量0.2mL(全血検査に必要な血液の最小量)の達成を目指す。
一方で、当初の研究計画で予定していたステレオカメラによる立体視と、血管の三次元位置決定システムの開発は行わないことする。これは、採血の対象となる血管は皮膚表面の極近傍に位置しており、深さ方向の情報が無くても針穿刺が可能であることが分かったためである。その代わりとして、レーザセンサの利用や腕を固定する治具の工夫により、穿刺対象となる皮膚表面の座標位置を正確に同定する手法を開発し、針穿刺動作の正確性向上を図る予定である。

次年度使用額が生じた理由

本研究において、当初予定していた針の自動穿刺機構および自動採血機構は概ね開発が完了した。しかしながら、本機構の性能検証を行っている中で、特にカメラシステム(照明装置を含む)の改良が必要であることが分かった。本研究初年度に開発したカメラシステムはおもに血管の可視化に重点を置いていたため、照明装置が大型の針駆動機構と干渉すること、針駆動機構のコントローラーへのデータ送信に問題が上がることが分かった。本問題を解決するためのカメラシステムの改良を2023年度に実施予定であり、その予算として2022年度予算の残額を充てる予定である。
また、国際学会発表および学術論文執筆に足る研究成果の構築が予定より遅れたことから、2022年度までの研究成果も含めて2023年度に国際学会発表および論文投稿を行う予定である。これらの費用に対しても該当予算を充当する予定である。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2023 2022

すべて 学会発表 (8件)

  • [学会発表] アルカリエッチングによる先鋭化手法を援用した PET 樹脂製マイクロニードルの作製2023

    • 著者名/発表者名
      稲葉 光紀, 高橋 智一, 青柳 誠司, 細見 亮太, 福永 健治, 高澤 知規, 松本 一
    • 学会等名
      2023年度精密工学会春季大会学術講演会
  • [学会発表] マイクロマシン技術を利用した神経モデル付き人工皮膚の作製 およびこれを用いた針穿刺による痛みの推定2023

    • 著者名/発表者名
      酒井 勇輔, 鈴木 昌人, 高橋 智一, 福永 健治, 高澤 知規, 青柳 誠司
    • 学会等名
      2023年度精密工学会春季大会学術講演会
  • [学会発表] ステップ・アンド・リピート法を援用した UV ナノインプリントによる 歯鋸状突起を有するマイクロニードルアレイの作製 -PFP ガスによる UV ナノインプリントの転写精度向上-2023

    • 著者名/発表者名
      濱田 浩輝, 鈴木 昌人, 高橋 智一, 青柳 誠司
    • 学会等名
      2023年度精密工学会春季大会学術講演会
  • [学会発表] フレキシブルな微細 PDMS モールドを組み込んだ金型を用いた射出成形 -蚊を模倣した鋸歯状突起を先端に有するポリ乳酸製マイクロニードルの作製-2023

    • 著者名/発表者名
      山口 大輔, 楊 淏予, 鈴木 昌人, 高橋 智一, 青柳 誠司, 鈴木 康一朗, 芳賀 善九
    • 学会等名
      2023年度精密工学会春季大会学術講演会
  • [学会発表] 血管可視化装置の開発および蚊の口針を模倣したマイクロニードルを用いた採血実験2022

    • 著者名/発表者名
      入潮 拓樹, 神崎 陽希, 鈴木 昌人, 高橋 智一, 福永 健治, 高澤 知規, 青柳 誠司
    • 学会等名
      2022年度精密工学会秋季大会学術講演会
  • [学会発表] ステップ・アンド・リピート方式のナノインプリントによる蚊の口針を模倣したマイクロニードルのアレイ化2022

    • 著者名/発表者名
      濱田 浩輝, 鈴木 昌人, 高橋 智一, 福永 健治, 高澤 知規, 青柳 誠司
    • 学会等名
      2022年度精密工学会秋季大会学術講演会
  • [学会発表] 2本一組の半割針に交互振動と回転を個別に付与可能な針穿刺装置の開発2022

    • 著者名/発表者名
      今西 将也, 稲葉 光紀, 酒井 勇輔, 高橋 智一, 鈴木 昌人, 福永 健治, 高澤 知規, 青柳 誠司
    • 学会等名
      2022年度精密工学会秋季大会学術講演会
  • [学会発表] PDMS型を用いた射出成形法の提案と任意形状のポリ乳酸製マイクロニードルの作製2022

    • 著者名/発表者名
      山口 大輔, 楊 淏予, 鈴木 昌人, 高橋 智一, 青柳 誠司, 鈴木 康一郎, 芳賀 善九
    • 学会等名
      第13回マイクロ・ナノ工学シンポジウム

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公開日: 2023-12-25  

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