研究実績の概要 |
本課題では, グライコミクス支援ソフトウェアToolbox Accelerating Glycomics (TAG)の開発を推し進め, 多くのグライコームに対応した自動データ解析の基盤を構築する事にある. 本課題では(1)糖鎖リストの充実, (2)機種依存のできる限りの解消など本体の機能拡張, (3)糖鎖生合成マップの拡張を進める事としている. 本年度は, 令和5年6月より名古屋大学糖鎖生命コア研究所に異動し本格的にグライコミクスの解析を行う事となった. 所属した糖鎖生命コア研究所のグライコミクスのラボでは, ロボットを用いた自動分析のプロトコルにあわせ, そのデータ解析にともなって本体の機能拡張を行った. (1)に対しては, 昨年度導入したlinked-glycansという考え方を発展させ, 質量分析スペクトルから, 可能な限りの糖鎖残基の接続情報を抽出, 糖鎖リストを自動生成する事に成功した. “Glycol Spectral Harvest”と命名し, 改良を続けながらこのシステムの論文投稿の準備を進めている. これに付随して, (3)の成果として糖鎖の接続情報について, 接続情報の一部をCytoscapeなどの一般のネットワーク可視化ツールに読み込ませることによって一部表現できる仕組みも実装した. 研究期間全体を通じ, MALDI-TOF-MSを用いたグライコミクスの自動解析は大きく進んだ. 糖鎖リストの自動生成は, 現在できたばかりでブラッシュアップは必要であるが, 血清に限らずどのようなサンプルからであっても, 糖鎖リストを自動で抽出できるので強力なツールをなる. あいまって新規糖鎖の発見の期待も高まるが, 糖鎖帰属に対しても詳細な, 実験的な検証研究が必要となってくるだろう. その面でもグライコミクスを加速したと考えている.
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