研究課題/領域番号 |
21K12125
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
長尾 知生子 大阪大学, 蛋白質研究所, 助教 (10402463)
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研究分担者 |
笠原 勇矢 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 創薬デザイン研究センター, サブプロジェクトリーダー (10740673)
李 秀栄 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 創薬デザイン研究センター, プロジェクト研究員 (50390670)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 人工核酸アプタマー / ドッキング / 分子動力学計算 / デザイン |
研究実績の概要 |
本研究では、あらゆるターゲットタンパク質に対して人工核酸アプタマーを取得できるよう、特異的な相互作用による親和性とターゲット表面との非特異的な相互作用も含めて「滞在時間」を考慮した修飾基の導入による、論理的、かつ効率的な人工核酸アプタマーのデザイン方法を提案する。具体的には、1.親和性と滞在時間を考慮した修飾基の選択、2.適切な修飾基を導入した人工核酸を用いたSELEX法によるアプタマー取得の効率化、3.インシリコによる効率的な人工核酸アプタマー最適化、の3項目を実施する。 これまでに、項目1. 親和性と滞在時間を考慮した修飾基の選択に関して、修飾基選択のパラメータの設定を行うための調査を実施し、パラメータの候補を得ている。 調査は、タンパク質間相互作用を阻害する低分子化合物が多数報告されており、かつ立体構造が解かれている5つのタンパク質について行った。ターゲットタンパク質の機能を阻害する化合物情報を取得し、ドッキング計算をタンパク質表面全体に対して行った。ドッキングの結果を、化合物の結合部位をターゲットの表面をタンパク質―タンパク質相互作用面とそれ以外の表面に分けて詳細に解析した結果、ターゲットの表面の性質によって化合物の分布や相互作用の強さが異なっていることが明らかになってきた。これらの結果に基づいて、化合物選択に利用するパラメータの候補を得ている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、昨年度に引き続き、項目1. 親和性と滞在時間を考慮した修飾基の選択に関して、修飾基選択のパラメータの設定を行うための調査を実施した。 パラメータ設定のために選定した、タンパク質間相互作用を阻害する低分子化合物が多数報告されており、かつ立体構造が解かれている5つのタンパク質について、阻害化合物とのドッキング計算を行い、結果を詳細に調べた。化合物の結合部位をタンパク質―タンパク質相互作用(PPI)面とそれ以外の表面に分けて、ドッキングスコア、結合ポーズの分布などを調べた結果、ターゲットごとに、表面の性質が異なり、強い阻害能を持つ化合物でもPPI面以外にも多く分布している系が存在することが明らかとなってきた。また、PPI面とそれ以外の面におけるスコアの差との間で阻害定数と弱い相関が見られる場合がある系も見られた。これらの結果に基づいて、化合物選択に利用するパラメータの候補を得た。 想定より詳細な解析が必要となったため、時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの解析結果をもとに、ターゲットタンパク質の表面の傾向を分析し、それに基づいて導入する修飾基選択を行い、アプタマーに導入するフラグメント候補をリストアップする。候補リストの上位のフラグメントについて、分子動力学計算を実施し、実際に導入するプラグメントを5-10個程度まで絞り込む。このフラグメントを導入した人工核酸を合成し、その人工核酸をライブラリとして用いたSELEX法により、人工核酸アプタマーの取得を行う。相互作用の阻害能の評価や表面プラズモン共鳴法によるkon, koffの測定を行い、既存の方法で得られているアプタマーと比較することで、新規の方法によって選択されたフラグメント導入による効果を確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ドッキングの結果について、想定より詳細な解析が必要となり、アプタマーに導入するフラグメントの選定まで完了させることができなかったため、次年度使用額が生じた。 今年度までの結果に基づき、至急、フラグメントの選定を行い、実験による検証を行う予定である。
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