研究課題/領域番号 |
21K12143
|
研究機関 | 岩手県立大学 |
研究代表者 |
堀川 三好 岩手県立大学, ソフトウェア情報学部, 教授 (40337473)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | Webパーソナライズ / 機械学習 / 動作・状態推定 / センシング / UX / オーギュメンテーション |
研究実績の概要 |
Webプラットフォームにて利用可能な動作推定モデルを構築すると同時に、汎用的な状態推定手法の確立に取り組んだ。特に、動作推定を行うための学習モデルを用いたプロトタイプ構築と状態推定を行うための学習モデルの検討を中心に進め、以下のような実績を得た。また学会発表や企業への技術提供を行うと同時に、研究成果についてイノベーション・ジャパン2021に出展をし、企業からのフィードバックを得た。 (1)動作推定を行うための学習モデルの検討およびプロトタイプ開発 ブラウザで収集された加速度・ジャイロ等のデータを用いた機械学習を用いて、高精度かつ即時性の高い動作推定モデルを開発した。また、利用用途に応じた学習モデルを少ないデータで生成するためのオーギュメンテーションの研究を進め、実務適応を容易にすることを可能とした。これらのプロトタイプを用いて企業と連携して健康推進Webサービスを開発・リリースし、実務適用における利点や課題についてフィードバックを得た。これらの成果は、国内学会において3件の発表を行った。 (2)状態推定を行うための学習モデル構築方法の検討 一連の動作のまとまりを状態として定義し、加速度データから状態区間を算出する方法について検討を進めた。その際、課題となった計算量を少なくするために、特性変化点が検出された場合に状態区間の推定を行う手法を提案し、特許出願をした。また、状態推定の利用方法として、UX向上のための利用者状態による動的コンテンツ提供について検討を進めた。これらについて、国内学会で1件の発表を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究計画の内容に沿って、当初計画よりも前倒しで順調に研究が進んでいる。Webサービスにおけるプライバシー強化で3rd Party Cookieが利用できなくなりつつあり、代替となるパーソナライズ技術が求められていることから、企業からの関心も高いようである。以下に、各項目の現在までの進捗状況をまとめる。 (1)動作推定を行うための学習モデルの検討およびプロトタイプ開発 実務適用で求められる精度を早々に実現し、実際に企業と共同して実務適用まで取り組むことができた。学習モデルについては、複数を比較した精度比較や現状のWebアプリとしての実装の容易性から、プロトタイプとしてCNN-LSTMを適用することとなった。あわせて、研究計画にはなかったが、実務適用に必要なオーギュメンテーションを敵対的生成ネットワークを用いて行う方法を考案し、実務適用をより容易にする技術を開発した。 (2)状態推定を行うための学習モデル構築方法の検討 当初は、動作推定の結果から状態推定を行う方法を計画していたが、加速度データから状態区間を算出し、状態区間内の動作推定結果から状態推定を行うことで、人間の行動にあった状態分類を行うことが可能となった。状態区間の推定には、変化点検出で用いられるChangeFinderを用いている。また、その際に計算量を少なくするための特性変化点の検出方法の併用を提案した。これらは、独自の技術提案となるため、特許出願を行った。現在、提案手法を用いて人間の行動にあった状態推定が可能かどうかを学内実験しており、概ね良好な結果を得ている。この進捗をもとに状態推定モデルのプロトタイピングを進める予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
状態推定モデルのプロトタイピングを行いながら、2022-23年度に計画していた状態推定を用いたWebパーソナライズ技術の開発を、可能なかぎり前倒して進める。 20222年度・前期は、提案する状態推定モデルの有効性の検証を行いながら実験結果をまとめ国内学会で発表する。後期は、状態推定モデルのプロとタイピングをしながら、Webパーソナライズの1つである利用者の状態に応じた動的デザイン・レイアウトについて検証実験を行う。2023年度は、広告配信タイミングの適正化やECサイトのレコメンデーションに閲覧状態を考慮する方法について検討を進める。これらのWebパーソナライズ技術の開発の有効性の検証方法として、企業と共同した実証実験として展開できるように進めていく。 現状の課題として、状態推定区間の算出の負荷量が高いことが挙げられる。収集データをPCを用いて分析し、状態推定を行う上では良好な精度を得られている。しかしながら、スマートホンで即時性高く行うためには、現状の特性変化点の適切な設定方法とChangeFinderに代わる軽量な変化点検出手法の適用を検討する必要がある。既存の軽量な代替技術の適用または独自の変化点検出手法を考案する予定である。 また、現在計画されていないWebパーソナライズ・サービスへの展開を目指し、学会発表や産業界との接点となる展示会などに積極的に参加して情報発信し、フィードバックを得る。
|