本研究は、モバイル端末利用者を対象に時間、位置情報、検索・閲覧・購買履歴および利用者属性に加えて、利用者の状態を考慮するWebパーソナライズの実現を目指している。ここで利用者の状態を「Web閲覧時の利用者の現実空間での動作状態とアクセス解析から得られるサイバー空間の利用状態を考慮したもの」と定義する。 利用者の状態を把握するためには、単なる動作推定のみではなく、一連のものとみなすべき状態が連続した区間(以降、状態区間)を検出する必要がある。本研究では、まず、Webブラウザから取得される加速度データに変化点検知を適用することで、利用者の状態区間推定を行う手法を提案し、検証実験により有効性の確認を行った。 次に、各状態区間における動作状態と利用状態から状態推定を行う手法を開発した。提案手法は、学習段階として対象Webサイトにおける状態をラベル付けする状態定義と、推定段階としてセンサデータを入力とした機械学習による状態分類で構成される。 状態定義は、各状態区間における動作状態と利用状態から行う手法を開発した。動作状態は、加速度・角速度データを入力とする機械学習を用いてモバイル端末の基本保持動作を推定し、各動作の動作比率を算出する。利用状態は、セッション時間や離脱率等の指標に基づくアクセス解析を行う。実験用サイトを用いた検証実験では、状態区間ごとに動作状態と利用状態をクラスタリングすることで状態定義が可能かことを示した。 状態分類は、Webブラウザで取得した加速度・角速度データを入力値、状態定義された状態ラベルを正解データとした訓練データを用いた教師あり学習により、どの程度の推定が可能かを検証した。その結果、即時性の高い状態分類が可能であり、Webパーソナライズへの活用が可能であることを明らかにした。今後、企業との共同研究による実用性の評価および社会実装を計画している。
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