研究3年目(2023年度)としては、(1)小学校での定型発達児のデータ収集、(2)データ解析を中心に研究を進めた。 (1)2021年度に開発したアプリケーション(iPadとapple pencilを用いて、簡便に書字の質的側面を評価できるもの)を使用した書字評価に加え、姿勢バランス機能、眼球運動、手指操作、目と手の協調運動の書字関連機能の評価を実施し、合計145名のデータを取得した。 (2)収集されたデータは、①書かれた文字の評価、②書字過程の評価、③書字関連機能の評価に大別される。①書かれた文字の評価とは、文字の判読性(Legibility)に関する評価であり、字形、文字の大きさのバラツキ、文字間の間隔のバラツキ、各文字の配置のバラツキを算出した。②書字過程の評価として、筆圧(平均・標準偏差)・書字速度・ペンの傾き(平均・標準偏差)を算出した。③書字関連機能の評価として、姿勢バランス機能、眼球運動、手指操作、目と手の協調の各スコアを算出した。これら、合計22指標と、学級担任が評価する書字の困難度の関連性を解析した。解析は以下の2つの手法を用いた。 ・ 書字に関連する要素を包括的に捉えるため,22指標を変数とした主成分分析を行い,抽出された主成分と書字の困難度との関連性を分析した。その結果、「運動の正確性」が書字困難の有無に関係し、「書字速度(速すぎる書字)」が書字困難の重症度に関連することが示唆された。 ・決定木ベースの解析手法であるLightGBMを用いて、困難度の予測に基づく、書字の困難度と22指標の関係の解析を行った。その結果、書字困難を予測する指標に関して「母指対立」「WAVES_線なぞり(比率)」が重要であることが示唆された。
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