本年度は,2022年度に構築したグローバーのアルゴリズムの教育支援システムを用いて行った被験者実験の結果をまとめて国際学会で発表した.この発表では,グローバーのアルゴリズムについて文章で説明した教育支援システムと,文章での説明に加えてシミュレータでその動きを確かめることができるようにした教育支援システムとを用いた場合を比較し,アルゴリズムの理解度の違いがあるかどうかについて被験者実験を行った.結果としては,必ずしもシミュレータが使える場合の理解度が高いというわけではなく,適度な説明と適度なシミュレータの使い方が理解を助けるのではないかとの知見を得るに至った.国際学会ではあまり大きな反応を得られなかったが,量子アルゴリズムという,理解が難しい題材を用いていることが一つの要因となっていると考えられる.本年度は,2021年度に開発したシステムおよび2022年度に開発したシステムをもとにさらなる被験者を募って被験者実験を行う予定であったが,これまでの被験者実験などから,今のままのシステムではまだ十分な教育支援システムとなっていないと思われる.量子の動きとそれを利用した量子アルゴリズムを説明するための視覚化技術・インタラクション技術に関するさらなる研究が必要である.そこで,本年度は,初心に返り,量子コンピュータおよび量子アルゴリズムの説明として,教科書や論文などでどのような説明を行なっているか,特にどのような図を用いて説明をしているかについてのサーベイを行った.この成果については,2024年度以降に発表する予定である.
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