研究課題/領域番号 |
21K12188
|
研究機関 | 和歌山工業高等専門学校 |
研究代表者 |
辻原 治 和歌山工業高等専門学校, 環境都市工学科, 教授 (50188546)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 防災 / 教育 / 教材 / ゲーム性 / RPG / 地域特化 / 実写映像 / AR |
研究実績の概要 |
土砂災害における重要な素因である地形を正しく認識するには、地形図を読み取る能力が必要となる。しかし、小中学生にとって地形図は日常的に扱うものでもなく、地形図から尾根や谷などの地形的特徴を把握するのは困難との指摘がある。そこで、土砂災害学習教材として、地形と地形図(等高線)との関係性を学習するツールとしてAR(拡張現実)技術を用いた防災学習砂場(AR砂場システム)の開発に取り組んだ。併せて立体地形模型へのプロジェクションマッピングも用いることで、土砂災害に関する防災学習をより効果的に行うことを目指した。特に防災学習砂場は、砂で作った地形とその変化に合わせて等高線などがリアルタイムで表示できる。地形を理解すると、土砂災害が発生しやすい場所が特定でき、プロジェクションマッピングやARによって、災害を疑似体験することができる。開発した教材を活用し、和歌山県内の山間部に位置する二つの小学校を対象として、「わがまち」周辺の地形模型を用意して実践し、アンケート調査を行って有効性を検討した。 また令和4年度に、災害が発生した時にどのような避難行動を行うかを考えるという点に着目し、マイ・タイムラインを作成しながら自身が行う避難行動を考えていくことができるアプリケーションを開発した。マイ・タイムラインとは住民一人ひとりの防災行動計画であり、災害時に自分自身がとる標準的な防災行動を時系列的に整理し、自ら考え命を守る避難行動のための一助とするものである。既存のアプリケーションも存在するが、一般に高機能であり、小中学生には扱いづらい。そこで、機能を限定し、小中学校に用意されているタブレットやPCにダウンロード可能で、教員も指導しやすい仕上がりとした。作成したアプリを用いた授業を小学校で展開し、児童にアンケート調査を行って効果を検討した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度には、地域の土砂災害リスクをハザードマップや現地撮影の映像などを利用した地域特化型の防災RPGを制作した。このアプリは、和歌山県日高川町のすべての小学校(9校)と中学校(5校)合計14校について、それぞれの学校周辺のハザード等を取り入れてカスタマイズしたものを日高川町教育委員会に提供した。日高川町教育委員会では、各小中学校に対して、この教材を利用した防災教育の実施を求めている。 土砂災害に関する防災教育において、最終的にハザードマップを理解し、これを早期の避難行動に結びつけることが大切である。とくに土砂災害の場合、ハザードマップの理解には、地図から地形を読み取ることが重要となる。しかし、地図に示されている2次元情報を頭の中で3次元に展開するのは容易ではない。そこで2022年度は、簡易砂場を使って、砂の動きに合わせて等高線などが砂の上にリアルタイムで表示される装置を開発した。この装置により、地形を3次元で実現し、時間軸上で変化する4次元で災害を疑似体験できる。この装置は、安価に構成でき、かつ持ち運びが容易であることから、和歌山県内の施設で常設予定と、横展開もできつつある。
|
今後の研究の推進方策 |
2021年度に制作した防災RPGとともにその英語版を製作し、外国人に防災教育にも活用したい。日本語版については、引き続き実践校からの意見聴取を行って、改善点等があれば対応する。 また、2022年度に作成した防災学習砂場やマイタイムラインについては、防災学習施設などでの常設を通して、普及したい。 さらに、2023年度は、新たな防災減災、避難行動学習教材の開発と実践による効果の検証を行う予定である。小学校では、防災教育と共にプログラミング教育の実施が求められている。両者はそれぞれ独立した科目ではないため、どのように取り組めばよいかが課題となっている。そこで、2023年度は、防災教育とプログラミング教育を融合した教材を開発し、プログラミングを通して自ら防災について思考し、避難に対する判断等を行う仕組みの構築に取り組む。また、その効果について検証する。災害のテーマは、土砂災害を想定しており、「わがまち」の土砂災害リスクを題材としたフィールドで、生徒がプログラミングによってアバターの動きを制御することで、危険回避や避難行動が学習できるものとする。 最後に、2023年度は本研究課題の最終年度にあたることから、研究のまとめを行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染拡大などの理由で、調査および資料収集や学会活動のための旅費などの執行が計画通りできなかった。 次年度は、教材開発のための物品購入および調査やヒヤリング等を精力的に行う予定であり、それに関連する予算、また学会活動や自然災害の被災地の調査に必要な予算の適正な執行に努める。
|