研究課題/領域番号 |
21K12190
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
大槻 恭士 山形大学, 大学院理工学研究科, 准教授 (00250952)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | ゲームAI / 不完全情報ゲーム / コミュニケーションゲーム / 人狼ゲーム / 人狼知能 |
研究実績の概要 |
従来の人狼知能国際大会では,参加AIは勝率のみで評価されるため,ボロを出さないように寡黙に徹し,自分より勝率の高いAIをゲームから排除するなどの,勝率第一主義の非協調的・利己的な戦術を採用するケースが増えており,このままでは,騙し・騙され・説得し・説得されるAIの実現から遠ざかることが危惧される状況である。 そこで,本研究課題のサブテーマ「勝率に代わる人狼知能の評価基準の策定」において,人狼AIの行動を評価する審判を導入し,ゲームを乱す行動や陣営の勝利を目指さない利己的な行動に対してリアルタイムにペナルティを課すような仕組みを導入することを計画している。2022年度は,最新の第4回人狼知能国際大会のゲームログを対象として,1.人狼が味方を裏切る,2.占い師が嘘の占い結果を報告する,3.裏切り者がゲームを攪乱しない,の3問題行動を定義し,それらについて勝率と問題行動の割合の関係を調べた。その結果,1と3の問題行動の割合と勝率の間に明確な関係は見出せず,2の問題行動の割合が大きいほど勝率が低いことが明らかになった。これらは当初の予想とは完全に逆の結果であり,問題行動を見つけて審判が強制介入する手法の有効性に疑問を投げかけることとなった。その原因としてエージェントの80%が簡易人狼知能作成システムにより生成されたものという戦術が極端に均質な村の分析であったことが考えられる。したがって,今後より戦術の多用な村を構成して再度分析を行う必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
サブテーマの一つである「人狼知能プロトコルの改良」が未完成である。計画当時の見通しが甘かったのが原因である。また,サブテーマ「プラットフォームの改良」が改良版プロトコルの完成待ちの状態となっている。新プロトコル案の策定・公開に向けて,2023年度は最優先に取り組まなければならない。 また,研究実績の項でも述べたように,2022年度の結果が審判制ルールの有効性に疑問を投げかけることとなっており,2023年度も引き続きルールの設計のため,ゲームログの分析を行う必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
サブテーマ1.人狼知能プロトコルの改良 大きく遅延しているため,最低でも当初の計画で2022年度終了予定の新プロトコル策定まで進める。 サブテーマ2.人狼知能プラットフォームの改良 サブテーマ1の新プロトコル策定が済み次第,新プロトコルに対応したプロトタイプ作成まで進める。 サブテーマ3.人狼知能評価方法の確立 対象とするエージェントの種類を変更して,2022年度と同様の分析を行う。それでも審判制ルールの有効性に疑問が生じるようであれば,審判制ルールの採用を断念し,時間はかかるであろうアルゴリズムの醸成によって人狼知能エージェントが社会的知能を備えるのを待つように方針を変更する。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由1.COVID-19により旅費の支出がなかったため。 理由2.クラウド利用料が予定より少なく済んだため。 2023年度の使用計画は以下の通り。①クラウド上計算資源の利用を2022年度に比べて大幅に増やし,次年度使用額と2023年度分を合わせた中から支出する。③旅費については当初計画通りに支出する。
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