2011年の福島第一原発事故由来のCs-137のうち、河川を流下するものの90%以上が粘土などの微細土砂粒子に吸着されている。河川水中のCs-137は初年度に比べ1~2桁低下しているが、現在も初期沈着量の0.1-0.01%のオーダーで毎年流出し続けている。Cs-137の流路内の滞留に関連して、砂洲(礫洲)などの堆積物中の粗大粒子間隙にトラップされる粘土粒子の挙動の理解が必要である。 2022年度に研究代表者の所属先である津山高専で製作した実験水路を用いて、今年度水路実験を実施した。7cm幅水路のコンパクトなシステム内で、水とともに泥質を循環させ、巨礫を模した人工的な起伏を底面に配置した水路へ粗粒砂を投入することで、礫間に砂質がたまる砂礫洲上の状況を再現し、浮遊する泥質がどの程度の取り込まれるのかを調べた。その結果、巨礫の間に先に薄く泥質が溜まり、その上を粗粒砂がキャップする現象 現地観測については、2022年9月に引き続き、2023年8月、11月に南相馬市大原水辺公園におけるドローン空撮を行い、河川工事後の地形データを取得した。2023年9月に観測対象の砂礫洲一帯が浸水する規模の出水があり、それにより生じた地形変化を抽出することができた。粒度分析と放射性Cs濃度の測定結果から、今回の出水では細粒成分に相当する10~100μmサイズの画分が流失し、粗粒砂のみが残存していたことが分かった。 以上2つの研究を、2024年度春に実施された日本堆積学会2024年熊本大会とJPGU2024で発表した。それらのフィードバックをもとに、研究成果の学術雑誌への投稿準備をすすめている。
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