研究実績の概要 |
本研究は、海洋における酸素非発生型好気性光合成細菌(Aerobic anoxygenic phototrophic bacteria, 以下AAnPB)の光利用戦略に焦点を当て、AAnPBが実海洋環境中で光を利用することで「元気に」増殖し、「長く」生き残っていることを実証することを目指している。海洋環境中で普遍的かつ時に高率で存在している AAnPBの光利用戦略を明らかにすることは、海洋全体の有機物循環量と循環効率を正しく見積もる上での科学的基盤となる。 今年度は、昨年度までの研究結果から、本海域における有機物循環量と循環効率を考える上で極めて重要なグループである可能性が示唆された、Rhodobacteraceae科の細菌として、Jannaschia属細菌・AI_62株の生理性状試験およびJannaschia属他種との比較ゲノム解析を進めた。本研究結果は、国際誌Antonie van Leeuwenhoek誌に受理された。 また、昨年度までの現場観測および小規模擬似現場培養実験から、本研究海域において、AAnPBを含むRhodobacteraceae科の細菌グループが、夏季の高温・強日射下において、その優占度が顕著に高まることを発見していた。高温・強日射下では熱および酸化ストレスが高まるため、その耐性メカニズムがあると予想し、細菌がつくるカロテノイド色素に着目した。そこで、本研究海域から分離した、カロテノイド色素生産菌の色素分析を行った。結果として、様々なカロテノイドを複数の株から検出した。その中でも、高い抗酸化能を有するMyxolを生産する株が見つかり、Myxolの抗酸化能を評価する上で、類似化学構造を有する4-ketomyxolと比較することで、カロテノイド色素の抗酸化能に関する構造活性相関評価を進めた。本研究結果は、第35回カロテノイド研究談話会にて口頭発表を行った。
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