研究課題
現地観測:2022年8月よりモンゴル国・湖沼谷の対象地域における地上気象・水文観測が実施された。観測項目は風向・風速、気温、湿度、PM10濃度、土壌水分、土壌熱慣性、降水量である。PM10濃度について、(1)冬季の土壌が凍結している期間は濃度が概ね低く経過しダストストームが生じていないこと、(2)土壌凍結期以外ではPM10濃度(日平均値)は土壌水分が壌質土では10%、粘質土では20%を越えると概ね0.05mg/m3を超えないことが分かった。(2)は土壌水分の増加に伴ってダスト発生が抑制されていることを示している。地峡風:湖沼谷は東西に延びる二つの山脈に挟まれており、谷を吹き抜ける地峡風が発生する。湖沼谷とその周辺における強風時(地上風速10m/s以上)の地上風向は地衡風向に関わらず西寄りである比率が高かった。また、多くの場合に冷気の移流を伴っていたことから、湖沼谷にダストストームをもたらすような強風が吹くのは多くの場合に低気圧に伴う寒冷前線の通過等による冷気の移流によることが示唆された。ダストストーム発生と諸変数の関係:ダストストームは地表面の諸条件と強風が組み合わせによって発生する。本研究では地表面の諸条件を表層土壌水分、地上植生とした。表層土壌水分は土壌の熱慣性を代理変数として推定した。地上植生には人工衛星データによる正規化植生指数(NDVI)を用い、風速とダストストーム発生日は定常気象観測データを用いた。2000~2022年において、月別のダストストーム発生日数が月平均風速と弱い正の相関にあり、NDVIとは弱い負の相関にあるが、土壌水分とは有意な相関がなかった。また、NDVIと土壌水分は特に8月に高い正の相関を示した。約20年の対象期間において、ダストストーム発生日数の増減、表層土壌の乾燥または湿潤化、地上植生の増減についていずれも明瞭なトレンドは認められなかった。
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Proceedings of the Fourth International Conference on Environmental Science and Technology (EST 2023), (O. Batdelger et al, (eds.))
巻: 1 ページ: 223-232
10.2991/978-94-6463-278-1_22