研究課題/領域番号 |
21K12214
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
中村 和樹 日本大学, 工学部, 准教授 (60435500)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 東南極 / 白瀬氷河 / 流動速度 / ALOS-2 / PALSAR-2 / ApRES |
研究実績の概要 |
陸域観測技術衛星2号(ALOS-2)搭載フェイズドアレイ方式Lバンド合成開口レーダ2型(PALSAR-2)の観測に同期する白瀬氷河上に設置されたアイスレーダ(ApRES)に搭載されたGNSSによる緯度・経度情報から流動速度を算出し、PALSAR-2データに画像相関法を適用することにより推定された流動速度の検証を実施した。PALSAR-2レベル1.1のSLC(single-look complex)データを使用し、はじめに画像ペアをサブピクセルでの位置合わせ(標準偏差0.1ピクセル以下)を実施し、つぎにレンジに1ルックおよびアジマスに2ルックのマルチルック処理を行った後にグランドレンジ画像へ変換し、ピクセルスペーシングを8 mにリサンプリングした。処理後の実効上の推定誤差は、サブピクセルの位置合わせにより0.1 pixel、流動速度にして0.03 km a-1とみなせる。 画像相関法により氷河の流動速度を調べることができた画像ペアは、2018年7月から2019年8月において20ペアである。ここで、20ペアのアノマリーを算出し、各ペアからアノマリーとの差を求めることにより電離層遅延の影響を調べた結果、その差が±0.2 km a-1を超える2ペアが、電離層遅延の影響を受けていると推察された。 以上から、電離層遅延の影響を受けていると考えられる2ペアを解析から除外し、PALSAR-2の画像取得と同期したApRESに搭載されたGNSSによる緯度・経度情報を用いて年当たりの流動速度に変換した。白瀬氷河の流動速度について、ApRESによる計測結果とPALSAR-2による推定結果を比較した結果、RMS誤差が0.049 km a-1であった.PALSAR-2による流動速度の推定結果の実効上の誤差が0.03 km a-1であることから,流動速度の計測結果と調和的であった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
白瀬氷河の流動速度について、ApRESによる計測結果とPALSAR-2による推定結果を比較するにあたり、長波長の観測であるPALSAR-2は電離層遅延の影響を避けられず、その影響評価の検討が必要とされていた。このことを、観測期間におけるアノマリーとの差から、電離層遅延の影響を検出する方法を検討できたことは、当初の計画を超えた進捗である。 以上の進捗は、IEEE Journal of Selected Topics in Applied Earth Observations and Remote Sensingに研究成果として投稿し、受理された。
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今後の研究の推進方策 |
白瀬氷河は東南極におけるリュツォ・ホルム湾を流出口としており、その末端部は浮氷舌として海に張り出し周囲は定着氷に囲まれている。定着氷も氷河浮氷舌の流動抑制にはたらくと考えられるが、これまでその役割は捉えられてこなかった。このことから、氷河浮氷舌および定着氷の相互作用を調べるため、ALOS-2/PALSAR-2の高分解能モードデータに画像相関法を適用して、大規模な定着氷流出が生じる前後での白瀬氷河浮氷舌と氷河末端を取り囲む定着氷の流動速度の分布とその変化を詳細に調べる。これに伴い、白瀬氷河の氷厚をCryoSat-2により推定し、氷河の流動速度と氷厚の変化に伴う相互関係を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度に、プロセッサを一新した高性能な計算機がApple社より発売されることになり、白瀬氷河の流動速の計算をより効率的に実施することが可能になることから、前年度の計算機の購入予定を変更した。
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