研究課題
基盤研究(C)
東南極の白瀬氷河における流動および氷厚変動を衛星観測データと現地観測データとの融合解析により明らかにした。その結果、氷床接地線付近の流動速度は1996年以来24年間ほとんど変わっていないことが分かった。一方で、氷河末端を取り囲む定着氷が氷河のカービングを抑制することを、浮氷舌と定着氷の流動速度から定量的に明らかにした。さらに、定着氷の流出に伴う氷河の流動速度が加速する現象を氷厚の変化から調べ、流動速度の加速が氷厚を減少させることを連続の式により説明できることを示した。
地球科学
東南極は質量収支が均衡していると考えられてきたが、その質量収支や白瀬氷河についても沖合からの暖かい海水の流入による顕著な底面融解が報告されていることから、東南極においても雪氷が消耗傾向にあると考えられる。このことから、本研究による定着氷の挙動に関する大規模な調査は、氷河端における氷河氷と定着氷の相互作用に関するより良い理解を得ることができ、南極における溢流氷河の質量収支のより確実な推定に貢献することが期待される。