研究課題
本研究の目的は、閉鎖的環境で低塩分化が進んだ最終氷期最盛期(LGM, 約2万年前)以降の西部北太平洋縁海における海洋環境変化を、珪質微化石を用いて数百年から千年の時間スケールで復元することである。195点の北太平洋表層堆積物試料中の珪質鞭毛藻群集組成の地理分布を明らかにし、モダンアナログ法のため海表面水温に紐づけた表層データセットを構築した。また、2000以上の珪質鞭毛藻個体の写真データベースを整備した。上記表層データセットを、日本海若狭沖および北海道西方沖で採取された2本の海底堆積物試料中の珪質鞭毛藻群集モダンアナログ法に応用し、LGM以降の水温変化を復元した。その結果、LGMの日本海は若狭沖、北海道西方ともに年平均水温が約5°Cと現在のオホーツク海並みであったことがわかった。また、対馬暖流流入時期は若狭沖で14000年前、北海道西方で10000年前であったことを示唆した。これらの成果を論文にまとめ、Progress in Earth and Planetary Science誌特集号に投稿した(査読中)。東シナ海北部男女海盆で採取された海底堆積物コア試料中の珪藻群集解析を行った。大陸系沿岸水が卓越した環境(17000-14000年前)から、現在のように黒潮が北上する環境(8000年前以降)へと退氷期に移行したことがわかった。この成果はProgress in Earth and Planetary Science誌に出版済み。ベーリング海西部および南部で採取した2本の海底堆積物試料中の珪藻群集および放散虫群集解析を行い、海氷が被覆し中層水が形成されたLGMから高珪藻生産の完新世への移行を明らかにした。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件)
Palaeogeography, Palaeoclimatology, Palaeoecology
巻: 626 ページ: 111713~111713
10.1016/j.palaeo.2023.111713