研究課題/領域番号 |
21K12224
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
千賀 有希子 東邦大学, 理学部, 准教授 (30434210)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 富栄養化 / 窒素循環 / レジームシフト / 硝化 / 干潟 |
研究実績の概要 |
近年,過剰な窒素栄養塩の負荷によって干潟の富栄養化が進行し,大型海藻の突発的かつ爆発的な増殖が観測されている.このような富栄養化に起因するレジームシフトは世界中の干潟でみられており,沿岸域生態系に与える影響が懸念されている.富栄養化に起因する干潟のレジームシフトの要因を解明し,その進行を予測するには,窒素栄養塩の動態を支配する微生物過程を把握する必要がある.本研究の研究対象地である谷津干潟では,富栄養化によって大型海藻アオサの爆発的増殖が長年観察されてきたが,2018年以降アオサは突然衰退し,紅藻オゴノリの出現がみられるようになった.本研究では,谷津干潟において,紅藻オゴノリが窒素栄養塩に与える影響を明らかにするとともに,富栄養化に起因するレジームシフトにともなう窒素栄養塩の微生物的除去過程(硝化-脱窒,硝化-アナモックス)と貯留過程(硝化-DNRA)の変化を定量的に,かつ微生物群集構造解析により定性的に解明することを目的とする. 本年度は,まずオゴノリの窒素栄養塩取り込み速度を明らかにするために,オゴノリと海水を入れた三角フラスコにアンモニウム塩(NH4+)と硝酸塩(NO3-)を加え,時間を追ってそれらの濃度の減少を測定した.NH4+の減少速度は,NO3-の減少速度よりも有意に高く,オゴノリはNH4+をNO3-より優先的に取り込むことが示された.これらの速度は,アオサを用いた実験で得られた速度と大きな違いはなかった. また,微生物的除去過程を評価するため,硝化過程から放出されるヒドロキシルアミン(NH2OH)に着目した.谷津干潟の海水および間隙水におけるNH2OH濃度を測定するために,疎水性樹脂を用いた固相抽出法(福森ら 2003)を改良した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
15Nトレーサーを用いて微生物的除去過程(硝化-脱窒,硝化-アナモックス)と貯留過程(硝化-DNRA)を追跡する予定であったが,コロナ感染者の増加により同位体測定装置を使用する予定であった研究機関に出入りすることができなかった。そのため,同位体を用いず微生物的除去過程を評価する指標として,硝化過程のみから放出されるヒドロキシルアミン(NH2OH)に着目し,測定法の確立を行った.
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今後の研究の推進方策 |
窒素栄養塩の微生物的除去過程と貯留過程を明らかにするため,15Nトレーサー法の開発を準備している.研究機関への出入りが軽減されなければ,谷津干潟におけるNH2OH濃度の時空間的分布をさらに明らかにし,レジームシフトにともなう微生物的窒素除去過程の変化をモデル化する予定である.
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