研究課題/領域番号 |
21K12225
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
太田 俊二 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (10288045)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 地球温暖化 / 感染症 / 感染症媒介蚊 / 個体群動態 / 個体群動態モデル / 降水量変化 / 生態系影響評価 |
研究実績の概要 |
現在進行中でかつ将来にわたっても継続すると予測されている気候変化は、感染症を媒介する生物の活動期間や分布域を変えるので、いままで感染症の流行が少なかった温帯域でもその拡大が懸念される。ゆえに、従来からの熱帯域を対象とした疫学的研究に限らず、温帯域の生物種の特性を踏まえた生態学的研究が必要である。また、有効な感染症対策のためには、媒介生物の国・地域単位などの広域分布に加えて、都市域内の不均一な微気象環境を反映させた局地的分布を明らかにしなければならない。 初年度は、本研究課題代表者がこれまでに作成してきた、感染症媒介蚊の生理にもとづいた気象データ駆動型の個体群動態モデル(Physiology-based Climate-driven Mosquito Population: PCMP)の修正に焦点を当てた。将来気候下での動態予測の精度を上げるため、文献調査を精力的に行った。また、降水量変化時の感染症媒介蚊の動態の重要性は、2018年度から2020年度にかけて行なった科研費課題のなかですでに明らかになっているため、このことを定量的に示す研究に着手した。とくに、降水パターンは局地的であることが多く、微気象データのなかでも取り扱いが極めて難しい。そこで、降水量を数値モデル内で明瞭に変更させる実験を行うことを検討し、いくつかの予備的な試験を繰り返し行ってきた。得られた実験結果の分析を踏まえ、本実験を実施できるよう現在調整している段階である。他に、都市域の土壌条件を考慮した土壌水分量変化の数値実験を行えるよう、現実的な条件の組み合わせを検討した。 これ以外に、PCMPモデルに関する論文をPloS ONE誌に投稿した。2回のやり取りののち、受理の一歩手前まで来ている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウイルスの蔓延による人流抑制は、2021年度中も続き、とくに5月の大型連休から8月の夏休みにかけての自粛モードで、公園等に観測場所を得ることは事実上不可能であった。また、コロナ禍において、微気象研究の担当予定者の帰郷や対面での研究室の活動が一部制限(とくに学外での活動)を受け、計画そのものの見直しを迫られた。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は研究計画の見直しをし、コロナ禍であっても着実に進められる内容に絞って進めることとする。ただし、当初の目標は変更せず、手法を変更する。具体的には、これまで本研究代表者が作成してきたモデルの修正に焦点を当て、将来気候下での動態予測の精度を上げるため、文献調査を精力的に行う。また、降水量変化時の感染症媒介蚊の動態に着目し、温度以外の気象要因の重要性を定量的に示すことを目指す。このことにより、当初計画の2つのうちの1つを確実に進めることとする。その一方で、当初計画のもう一つを実現できるような観測サイトを受け入れてくれる場所を探していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
人流抑制が求められる都市域の公園などに観測サイトを設置することは容易ではないため、大幅な研究計画の見直しが必要となった。また、研究補助者として予定していた人物がコロナ禍で帰郷するなど雇用することができなかった。そのため、初年度に予定していた支出がなかったことが最大の理由である。局地的な気象条件の変化をモデルに組み込むべく、研究計画を見直し、数値実験で代替する方法を模索しているので、次年度以降にはそのような実験に必要な支出を予定している。
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