研究課題/領域番号 |
21K12227
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研究機関 | 気象庁気象研究所 |
研究代表者 |
工藤 玲 気象庁気象研究所, 気象観測研究部, 主任研究官 (00414508)
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研究分担者 |
入江 仁士 千葉大学, 環境リモートセンシング研究センター, 教授 (40392956)
西澤 智明 国立研究開発法人国立環境研究所, 地球システム領域, 室長 (10462491)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | エアロゾル / 気候変動 / コロナ |
研究実績の概要 |
本研究では、約半世紀に及ぶ日本周辺域のエアロゾルの長期変動を明らかにし、地球システムモデルの再現性の検証、そして、コロナ禍の影響を調べることを目的とし、気象庁の長期日射観測の解析、環境省の大気汚染物質広域監視システムのデータ解析、SKYNETとAD-Netの複合解析、衛星観測の解析を進めている。今年度は、SKYNETとAD-Netの複合解析、衛星観測の解析、地球システムモデルの再現性の検証を実施した。SKYNETとAD-Netの7地点データを複合解析することで、2005年から2021年のエアロゾル組成(水溶性・光吸収性・ダスト・海塩粒子)の鉛直分布について、大気境界層と自由大気に分けて長期変動を調べた。その結果、ユーラシア大陸から離れた地点では大気境界層内の水溶性・光吸収性粒子の減少、大陸に近い地点では大気境界層と自由大気内の水溶性粒子の減少が顕著であることが分かった。2007年から2021年のA-Trainの衛星観測データを解析し、東アジア域のエアロゾル組成の変動を調べた。その結果、中国の概ね全域から西日本にかけて、水溶性粒子が顕著に減少している領域が広がっていることが分かった。特に、海上から日本域にかけては上空での減少が顕著であり、上述のSKYNETとAD-Netの解析結果と整合的であった。地球システムモデル(MRI-ESM2)のエアロゾルの光学的厚さの変動を、日射観測から得られた1933年から2021年までの解析結果と比較したところ、モデルは1970年代まで観測と整合的な変動を示していたが、1980年代以降のエアロゾルの減少傾向を再現できていないことが分かった。そして、近年のアジアの変動を取り入れた最新のエミッションインベントリに変更したところ、観測と整合的な結果を示すことが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当所の計画通り、SKYNETとAD-Netの複合解析、A-Trainの衛星観測の解析によって、東アジア域のエアロゾル組成の長期変動を調べた。その結果、組成に関数する長期的な変動傾向を導出することができた。さらに、地球システムモデルと観測結果の比較を行い、モデルが再現できていない期間とその要因を判明させた。
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今後の研究の推進方策 |
予定していた全ての地上・衛星観測データの解析結果と地球システムモデルの結果がそろったため、長期的な変動傾向を定量化し、全ての結果の整合性を調べる。また、長期的な変動の中でコロナ禍の影響を定量化し、結果をまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため、国内外を移動する出張を見合わせたことにより、次年度使用額が生じた。現在は感染状況が沈静化してきているため、令和5年度は成果発表のために使用することを計画している。
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