研究課題/領域番号 |
21K12234
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
鈴木 正敏 東北大学, 災害科学国際研究所, 講師 (60515823)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | トリチウム水 / 有機結合型トリチウム / 低濃度 / 細胞影響 |
研究実績の概要 |
トリチウム影響の中で特に科学的知見が不足している低濃度・持続処理に関する知見について、細胞内取り込みとDNA二重鎖切断の誘発をトリチウム水(HTO)と有機結合型トリチウム(OBT)で比較した。 60-6,000 Bq/mLの範囲でHTOとOBTとしてトリチウム標識チミジン(3H-Thy)とパルミチン酸(3H-PA)をヒト正常上皮細胞であるRPE1-hTERTを培養する培地中に添加し、30日間の持続処理を行った。トリチウム処理期間中の累積分裂回数を指標にすると、6kBq/mLのHTO処理では顕著な細胞分裂回数の抑制は確認されず、同濃度で処理したOBTでは増殖抑制が3H-PA 、3H-Thyの順に抑制が強くなった。3H-Thyは処理開始5日後以降はほとんど細胞が増殖しなかったが、3H-PAは分裂回数の増加速度が遅くなるのみで30日後まで緩やかに上昇を続けた。トリチウム濃度を60 Bq/mLまで下げると累積分裂回数への影響は3H-Thyで若干の抑制が見られた以外は、未処理時と同等の分裂回数を示した。トリチウムの細胞内取り込みについて、トリチウム処理後の細胞を液体シンチレーションカウンタで測定すると、HTOは若干取り込んでいるが添加したほとんどが培地中で測定された。細胞内への取り込みは3H-Thy 、3H-PA の順に多くなった。トリチウム処理細胞から細胞核分画と細胞質分画のそれぞれを抽出して液体シンチレーションカウンタで測定すると、3H-Thyは細胞内に取り込んだトリチウムの約9割が細胞核に、3H-PAは約9割が細胞質に存在することが明らかとなった。特にOBTにおける細胞影響の予測において、トリチウムの取り込み量だけではなく細胞内局在が重要な要素となり、細胞内局在を考慮したトリチウム暴露による線量評価系の確立の必要性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
低濃度HTOとOBTの持続処理による細胞影響の違いについて、取り込み量と細胞内局在の違いで説明するデータを収集した。
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今後の研究の推進方策 |
トリチウム持続処理中の細胞内あるいは細胞分画内のトリチウム量の時間変化やトリチウム除去後の細胞内トリチウム量の時間変化を測定し、被ばく線量評価に必要なデータを収集する。また、特にOBTでトリチウムが集積している領域の均一性についてオートラジオグラフィーで確認し、モンテカルロシミュレーションで線源を設置する際の妥当性を検討するためのデータを収集する。
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