研究課題/領域番号 |
21K12235
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研究機関 | 福島大学 |
研究代表者 |
金指 努 福島大学, 環境放射能研究所, 研究員 (60796910)
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研究分担者 |
和田 敏裕 福島大学, 環境放射能研究所, 准教授 (90505562)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 福島第一原子力発電所事故 / 渓畔林 / セシウム137 / 枯死葉 / カクツツトビケラ科 |
研究実績の概要 |
山地渓流において、枯死葉から水生昆虫への放射性セシウム移行プロセスを明らかにするため、枯死葉を主に摂食する水生昆虫(カクツツトビケラ科幼虫、以下、カクツツトビケラ)の摂餌試験を行った。水温一定の飼育環境下で、高汚染地域から採取したホオノキ枯死葉を、低汚染地域から採取したカクツツトビケラに与えて摂食させ、摂食時間とセシウム137濃度との関係を解析した。実験開始から4時間経過後、既にカクツツトビケラからセシウム137が検出され、時間経過とともにセシウム137濃度が上昇した。しかし、実験終了時(36時間後)まで、カクツツトビケラのセシウム137濃度はホオノキ枯死葉より常に低かった。 さらに、実験期間中におけるカクツツトビケラの排泄物をろ過、採集し、セシウム137濃度の測定に成功した。排泄物のセシウム137濃度も実験開始から時間経過と共に上昇し、実験終了時には、カクツツトビケラだけでなく、ホオノキ枯死葉よりもセシウム137濃度が高くなった。摂餌行動によるセシウム137の取り込みだけでなく、排泄による環境中への移行過程までの一連のプロセスについて明らかにした、新規性の高い成果と考える。 前年度に、福島県浜通りおよび中通り地方の、7箇所の渓流にて採取した、渓畔域の陸域及び、渓流に堆積している当年に枯死した葉(コナラ、イタヤカエデ、ホオノキ)およびカクツツトビケラのセシウム137濃度を測定、比較した。樹種によって当年枯死葉のセシウム137濃度は異なり、渓流に堆積している当年枯死葉が陸域よりも濃度が低くなる傾向が明らかになった。また、カクツツトビケラのセシウム137濃度は、渓流に堆積している当年枯死葉と同程度もしくは低くなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カクツツトビケラへの摂餌実験において、前年度の課題であったカクツツトビケラの共食い防止方法の確立が、小型容器を用いた個別飼育により達成されたため実験の開始に至り、データを得られるようになった。 野外調査で計画していた渓畔林の生葉、渓畔域の陸域及び渓流内に堆積している枯死葉、及びカクツツトビケラの採取をすべて終えて、その一部サンプルについてはセシウム137濃度の測定まで終了している。 以上の理由から、本研究はおおむね順調に進展していると評価する。
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今後の研究の推進方策 |
カクツツトビケラを用いた、枯死葉の摂餌による放射性セシウム移行実験を次年度も進める。実験終了までの期間を36時間から5日間へと、より長期間のセシウム137濃度変化を観察するとともに、解析に十分なデータを得る。カクツツトビケラの排泄物のセシウム137濃度も同様に測定し、枯死葉の摂食と排泄によるによるセシウム137濃度変化を明らかにする予定である。 本年度、野外調査にて採取した生葉、枯死葉(陸域及び水域)、カクツツトビケラのセシウム137濃度を引き続き測定し、渓畔林から渓流の枯死葉を摂食する水生昆虫までのセシウム137濃度比を解析し、移行プロセスを明らかにする予定である。 これらの解析結果から学術論文を作成し、投稿・受理を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度に発表申込をした学会大会発表も、コロナ禍の影響でオンライン開催になり、大会会場へ行くための旅費を使わなくなったため、次年度使用額が生じた。 翌年度、学会発表を計画している大会は現地開催を予定しているため、旅費の使用が期待される。また、本事業の研究成果を基に学術論文を英文で作成するため、英文校正料に使用する予定である。
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