研究課題/領域番号 |
21K12237
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研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
保田 隆子 日本女子大学, 理学部, 研究員 (40450431)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | マイクログリア / 免疫細胞 / 免疫暴走 / サイトカインストーム / メダカ胚 / 放射線 |
研究実績の概要 |
本研究では脳腫瘍放射線治療の副作用を軽減・回避する新規な治療法を提案するためのモデル生物として、脳のサイズが哺乳類と比較して大変小さく脳全体を俯瞰的に観察することが可能なメダカ胚を利用して検証を行った。脊椎動物に共通する基本的かつ普遍的なメカニズムを研究する上で、メダカはゼブラフィッシュと並ぶ有効な小型魚類モデルである。これまでの研究から、活性化したミクログリアが神経保護的に働くM2型から神経傷害性に働くM1型へ極性スイッチするタイムポイントは放射線照射 40 時間前後であろうと考えられ、本研究において活性化した神経保護的なM2型ミクログリアの役割を抑制することなく過剰かつ持続的な神経傷害性に働くM1型ミクログリアの活性化を制御可能な薬剤のスクリーニングを目指した。また、これまでの研究からM2型ミクログリアはL-plastinを発現し、M1型ミクログリアがApoEを発現することを確認しているので、照射48時間後にApoEをプローブとしたin situハイブリダイゼーション(WISH)を行い活性化ミクログリアの分布を調べた。 ミノサイクリンはサイトカインIL-1βを抑制してM1型ミクログリアの活性化を選択的に抑制することが可能であると既に報告されている。そこで本研究では、ミノサイクリンを照射胚へ投与し、照射48時間後にWISH法により認められたApoEを発現する活性化ミクログリアをImageJにより定量的な評価をして検証した。 活性化ミクログリアの減少は最大溶解濃度に相当するミノサイクリン濃度100uMでは薬効が全く認められなかったがミノサイクリン50uMではミクログリアの数には変化がなかったものの活性化ミクログリアの脳内に占める面積が非投与群と比較して有意な減少が確認された。これらの研究結果から本手法によるメダカ胚を用いた薬剤スクリーニングの可能性をしめすことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究はメダカ胚を用いた活性化したミクログリアを抑制できる薬剤のスクリーニングを目的としている。既にマウスを用いた実験によって活性化したミクログリアの抑制が可能であることが見出されている薬剤、ミノサイクリンをメダカ照射胚へ投与して調べた。実験方法は照射48時間後にwhole-mount in situハイブリダイゼーション法を行い、脳内に認められたApoEを発現する活性化ミクログリアをImageJにより定量的な評価を行い検証した。その結果、活性化ミクログリアの減少は最大溶解濃度に相当するミノサイクリン濃度100uMでは薬効が全く認められなかった。一方、ミノサイクリン50uMではミクログリアの数には有意差が認められなかったものの活性化ミクログリアの脳内に占める面積が非投与群と比較して有意に減少することを確認した。本研究結果はメダカ胚を用いた薬剤スクリーニングの有効性を示すものであると考えており、本研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究はメダカ胚を用いた活性化したミクログリアを抑制できる薬剤のスクリーニングを目的としている。活性化したミクログリアの抑制が可能であることがマウスで報告されているテトラサイクリン系抗生物質ミノサイクリン、IL-1bにより誘導されるシクロオキシゲナーゼ(COX2)の発現を阻害するインドメタシンを用いて実験をおこなってきたがインドメタシンでは全く効用を示さなかった。一方、ミノサイクリンの投与では活性化ミクログリアの占める領域面積に有意差が認められメダカ胚を用いた薬剤スクリーニングの可能性を示すことができた。今後、他にマウスで有効とされている薬剤を投与してミクログリアの数に変化が認められるのか、さらなる検証を行い最適な薬剤をスクリーニングしていくことを試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在whole-mount in situハイブリダイゼーション法による評価を自分自身でImageJを用いて評価しているが、どうしても主観が入り恣意的になりかねないため今後は客観的な評価が必要となる。これまで評価系の確立に注力してきたため、活性化ミクログリアの定量的な評価を外注する予算を翌年度分として繰越すに至った。
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