研究課題/領域番号 |
21K12243
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
児玉 靖司 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 教授 (00195744)
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研究分担者 |
白石 一乗 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 助教 (40347513)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | DNAリガーゼⅣ / DNA2本鎖切断修復酵素 / 非相同末端結合 / 姉妹染色分体交換 / 二動原体染色体 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、酵素活性ドメインに新規遺伝子変異を導入したDNAリガーゼⅣ(Lig4)がどのようなDNA2本鎖切断(DSB)修復異常を示し、さらにそのDSB修復異常がどのような生体影響を誘発するのかを明らかにすることである。そのために、本研究は、Lig4酵素活性ドメインの447番目のアミノ酸が、トリプトファン(W)からシステイン(C)に置換された(W447C)変異マウス(Lig4W/W)を材料に用いた。2022年度は、①姉妹染色分体交換(SCE)、②テロメアSCE(T-SCE)、及び③染色体異常の3つの指標について調べたので報告する。①Lig4W/W変異がSCEに及ぼす影響を調べたところ、自然発生SCE頻度については、Lig4遺伝子型の違いによる変化は見られなかった。一方、X線(0.5Gy)誘発SCE頻度は、野生型細胞は変化しないが、ヘテロ変異(Lig4+/W)及びホモ変異(Lig4W/W)では頻度が増加した。また②Lig4W/W変異がテロメアSCE(T-SCE)に及ぼす影響を調べたところ、Lig4W/W変異は自然発生T-SCEを約3倍増加させた。一方、X線(0.5Gy)誘発T-SCEは、全ての細胞で頻度が増加し、その頻度はホモ変異で大きくなった。次に、③Lig4W/W変異が、交換型染色体異常である二動原体染色体形成に及ぼす影響について調べたところ、Lig4W/W変異はX線誘発二動原体形成頻度を著しく増加させることが明らかになった。このことは、Lig4W/W変異が、DNA切断端の再結合率を低下させるとともに、誤った再結合(二動原体染色体形成)を促進する効果があることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は、これまでのところ、ほぼ順調に推移している。2022年度は、Lig4W/W変異が表現型に及ぼす影響について、主に染色体を指標にして解析した。その結果、①SCE頻度、②T-SCE頻度、及び③二動原体染色体形成頻度のいずれにおいても、Lig4遺伝子変異が影響を及ぼすことが明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、本プロジェクトの最終年度として、Lig4W/W変異が細胞分裂に及ぼす影響について調べるために、これまで2年間にわたって準備を進めてきたライブセルイメージング手法を用いて、Lig4W/W細胞の被ばく後の運命について細胞世代を追跡した系譜解析を実施する。2022年度のX線誘発染色体異常の解析では、被ばくしたLig4W/W細胞において、断片の増加に加えて、二動原体染色体形成頻度が増加することが明らかになった。この現象について、ライブセルイメージングによる細胞分裂の解析により、再確認されるかどうかどうかが成果のポイントになる。また、Lig4W/W細胞が放射線高感受性を示すことはすでに確認したので、次に細胞周期依存的にDNA2本鎖切断(DSB)を誘発するトポイソメレースⅡ阻害剤(etoposide)に対する感受性について、コロニー形成法を用いて調べ、X線感受性と比較検討することにより、DSB修復の細胞周期依存性について考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度は染色体を指標にした研究を集中的に行ったことにより、効率のよい物品購入が可能になり、経費を節約しながら研究を順調に進めることができた。2023年度は、本プロジェクトの最終年度になるので、研究推進方策で掲げた目標達成のために経費を有効に使用する計画である。
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