研究課題/領域番号 |
21K12247
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
舟山 知夫 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 量子バイオ基盤研究部, 上席研究員 (40354956)
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研究分担者 |
鈴木 芳代 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 崎量子応用研究所 量子バイオ基盤研究部, 上席研究員 (10507437)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | マイクロビーム / 生物照射技術 / 高LET / 重イオン / 線虫 |
研究実績の概要 |
生物個体の局部的な放射線被曝に対する応答は、分子メッセージング機構で情報を伝達する細胞ネットワークを介して個体全体の様々な細胞に影響が波及するため、全身被曝の応答の解析で得られた知見からだけでは、その全貌を明らかにすることが難しい。個体における照射部位以外の領域への照射影響の波及であるアブスコーパル効果(個体内でのバイスタンダー効果)はその好例である。生体試料の一部を、 細く絞った放射線で狙い照射するマイクロビーム照射技術は、この個体の局部照射効果を解明する研究に極めて有効である。そこで、本研究では、精細なビームスポットを形成できる集束式マイクロビーム装置を用い、個体の1細胞への高精度な「点」と、任意な形状で個体の局部を均一線量で塗りつぶして照射する「面」の両方の照射を実現する照射技術を開発することを目的とする。 2023年度は、2022年度までの本課題で実施された研究を通じて実現した集束式重イオンマイクロビームを用いた生物個体局部への照射技術の概要を原著論文としてとりまとめ、オープンアクセス英文国際誌であるBiology誌に掲載し広く公開した。一方で、開発した技術を用いた生物個体の局部的な放射線被曝に対する応答の解析は、照射実験のビームタイムの確保が限定的だったため成果を得ることができなかった。そのため、研究期間を1年延長し、2024年度に生物個体の局部的な放射線被曝に対する応答の解析を継続すると同時に、未発表の当該技術の詳細について報文として取りまとめ公開することを予定する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年度までの研究で計画した個体の局部を均一線量で塗りつぶして照射する技術を開発し、当該技術の概要を報文として公開した。しかし、実施予定だった開発した技術を用いた生物個体の局部的な放射線被曝に対する応答の解析が、照射実験のビームタイムの確保が、加速器施設の年間運転時間短縮などの影響もあり、限定的だったため充分な成果を得ることができていない。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間を1年延長し、2024年度に生物個体の局部的な放射線被曝に対する応答の解析を継続すると同時に、未発表の技術詳細について報文として取りまとめ公開することで、研究で得られた成果の公開を最大化することを予定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度には、生物個体の局部的な放射線被曝に対する応答の解析実験の実施を予定していたが、ビームタイム確保が限定的だったため実施できず、経費使用額が予定を下回った。そこで、研究計画を1年間延長し、当該実験の実現を目指すとともに、未発表の開発した照射技術の詳細に関する報文のとりまとめと公開に経費を使用することを予定する。
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