研究課題
本研究の目的は、環境評価生物であるメダカの胸腺をターゲットにして、放射線+αの異なる複数のストレスをメダカに与え、胸腺の萎縮の程度から、ストレス影響が現れるしきい値を検証する。具体的にαは、A)概日リズム障害、B)化学物質、C)心因的要因を想定している。今年度の目的は、A)概日リズム障害、B)化学物質(無機ヒ素)、C)心因性ストレスをそれぞれ別々の実験を行い、それぞれのメダカへ影響が出るしきい値の算定、検証を行うことである。A)概日リズム障害については、概ね予想通りの結果を得ており、今後の放射線との複合影響の定量へ進めるつもりである。B)化学物質については、実験スペースの確保や試薬購入の遅延などの関係から、現在研究を始めたところである。今年度内には検証が終わり、次のステップに進めるものと思われる。C)心因的要因については、2回の実験から心因的要因からの有意な胸腺萎縮が引き起こすことが観察されたので、放射線との複合影響実験を進めていきたいと考えている。本研究成果については、日本放射線影響学会第64回大会(オンライン開催)にて、「メダカ胸腺を用いた放射線との複合影響定量システムの開発 Development of a biosystem to detect the combined effects of radiation and other stress factors using medaka thymus.」の演題で発表を行い、聞きに来た研究者とディスカッションを行い、問題点等を話し合った。また、日本酸化ストレス学会主催のフリーラジカルスクール2021にて、今回の科研費課題を含む内容で講義を行った。
2: おおむね順調に進展している
今年度の目的は、A)概日リズム障害、B)化学物質(無機ヒ素)、C)心因性ストレスをそれぞれ別々の実験を行い、それぞれのメダカへ影響が出るしきい値の算定、検証を行うことである。A)概日リズム障害 当研究室でのメダカ飼育の明暗管理は、7:00―21:00を明、残りを暗としている。概日リズム障害を引き起こすために、マウスなどでの研究を参考に、4日毎に8時間前倒しし、計12日を1クールとして、胸腺の大きさを測定した。結果、日照リズムを変えた群では、変えていないコントロール群に比べて、6日目頃から胸腺の萎縮が確認された。その後実験開始12-16日目には、日照リズムを変えた群に胸腺回復の傾向が確認された。環境変化への耐性が見られたものと考えている。B)化学物質(無機ヒ素) 胸腺は環境からの影響を受けやすく、多くの環境中に存在する化学物質が胸腺萎縮作用を持つことが知られている。無機ヒ素はマウスでの胸腺萎縮作用が確認されており、マウスに亜ヒ酸10mg/kgで投与後1日目に約20%減、3日目に30%減のデータが報告されている。今年度、亜ヒ酸を購入、実験を行う予定であったが、専用スペースの確保、試薬納品の遅延などの理由から、データを示すまでには至っていない、現在懸案事項は全て解決され、実験を始めたところである。C)心因性ストレス 胸腺萎縮は、様々な心因性ストレスでも引き起こされることが知られている。大きいメダカと小さいメダカを同鉢で飼育することで、小さいメダカに心因性ストレスがかかれば、胸腺の萎縮が見られるはずである。今回、小メダカ(11-15mm)と大メダカ(17-23mm)のメダカを同じ小タッパで飼育し、小メダカの胸腺の変化を撮影した。結果、同鉢開始数日目から胸腺の有意な萎縮が観察され、小メダカには過度なストレスがかかっていることが確認された。
今年度は、試薬納品遅延等の影響から一部遂行できていない部分もあったが、それも現在は解消され、おおむね予定通りに研究は遂行されていると考えている。 また、実験結果についてもA)概日リズム障害とC)心因性ストレスについては、予想と大きく違う結果は出ていなく、今後さらなる放射線との複合影響を調べることは可能であると考えている。研究計画に従い、研究を遂行していきたいと考えている。
メダカの飼育継代、データ解析のために業務補助員一人を希望、計上していた。本研究費採択後すぐに公募を、所内HP、ハローワーク、indeed等にかけたが、12月末まで誰一人として候補者が現れず、計上していた人件費を使うことができなかった。2022年3月より、業務補助員を1名採用することができた。これまでの遅れ分を取り戻すため、次年度少し多めに労働時間を計上している。
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Radiation Research
巻: 196(1) ページ: 100-112
10.1667/RADE-20-00218.1