研究課題
本研究の目的は、環境評価生物であるメダカの胸腺をターゲットにして、放射線+αの異なる複数のストレスをメダカに与え、胸腺の萎縮の程度から、ストレス影響が現れるしきい値を検証する。具体的にαは、A)概日リズム障害、B)化学物質、C)心因的要因を想定している。これまでA)概日リズム障害については、4日毎に8時間ずつ明暗サイクルを早める事で、胸腺の萎縮を確認しており、放射線照射との相乗効果があるのかどうかについて検証を始めている。 B)化学物質については、試薬購入の遅延などの関係から、今年度検証を行った。文献のメダカ致死濃度を参考に、亜ヒ酸の濃度を振って試したが、致死濃度よりもかなり高濃度にしないと胸腺への影響は出ないことが示された。C)心因的要因については、大きさの異なる2匹のメダカを同鉢で飼育する事で、心因的要因からの有意な胸腺萎縮が引き起こすことが観察されたので、放射線との複合影響実験を進めている。 本研究の成果については、日本放射線影響学会第65回大会にて、 「Development of a biosystem for detecting the combined effects of radiation and other stress factors using medaka thymus. メダカ胸腺を指標にした放射線との複合影響定量システムの開発」の演題で発表を行い、聞きに来た研究者とディスカッションを行い、問題点等を話し合った。
2: おおむね順調に進展している
本課題の目的は、A)概日リズム障害、B)化学物質、C)心因性ストレスをそれぞれ別々に与え、メダカ胸腺へ影響が出るしきい値の算定、さらに放射線照射のストレスとの関係について調べることにある。A)概日リズム障害 マウスなどでの先行研究の結果を参考にして、明暗サイクルを4日毎に8時間前倒しし、計12日を1クールとして、胸腺の萎縮を確認している。その後に放射線を照射することで、これまでのX線だけのストレスに比べてどの程度効果が増大するかの検証をおこなっている。B)化学物質(無機ヒ素) 胸腺は環境からの影響を受けやすく、多くの環境中に存在する化学物質が胸腺萎縮作用を持つことが知られている。今年度、亜ヒ酸Naを購入し暴露実験を行った。文献では10ppmで亜致死とある。今回10ppmを基準に濃度を下げて実験を行ったが、いずれも胸腺の萎縮は観察されなかった。そのため濃度を上げて実験を行い、500ppmの濃度でようやく胸腺への萎縮が確認された。ただ、この濃度では翌日に死亡する個体も出てきており、実験には適さない事が判明した。C)心因性ストレス 胸腺萎縮は、様々な心因性ストレスでも引き起こされることが知られている。昨年までの研究成果では、大きいメダカと小さいメダカを同鉢で飼育することで、小さいメダカに心因性ストレスがかかり、胸腺の萎縮を観察している。今年度、そこにさらに放射線のストレスをかける実験を始めた所である。また、これらのA)の実験中に直接は関係ないが、興味深い現象が観察された。冬期に室内が過度に乾燥するため(湿度10%以下)、飼育に支障をきたすため、メダカの個別ケージに蓋を乗せ乾燥を防ごうとしたところ、胸腺の萎縮が観察された。今後この現象についても余力があれば、試してみたい。
今年度行ったB)化学物質(亜ヒ酸Na) については、想定以上の濃度の暴露をやらなければ、胸腺が萎縮しない事を確認した。このため今後は、A)概日リズム障害とC)心因性ストレスに絞って、放射線照射ストレスとの関係のデータを積極的に出していくつもりである。また、A)概日リズム障害の実験時に飼育ケージに蓋をする事で、胸腺の萎縮が観察された事象が見られたので、これに関しても余力があれば、解析していきたい。今後とも研究計画に従い、研究を遂行して、学会発表や論文として発表を行っていきたいと考えている。
昨年度、メダカの飼育継代、データ解析のために業務補助員一人を計上し、公募を行ったが、希望者が中々現れず、結局2022年3月から、業務補助員を1名採用することができた。これまでの遅れ分を取り戻すため、少し多めに労働時間を計上している。
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Radiation Protection Dosimetry
巻: - ページ: -
10.1093/rpd/ncad140
Life
巻: 12(4) ページ: -
10.3390/life12040565
BIOCELL
巻: 46(10) ページ: 2315-2325
10.32604/biocell.2022.021161
Radiation Medicine and Protection
10.1016/j.radmp.2022.12.001