研究課題/領域番号 |
21K12252
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研究機関 | 国立研究開発法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
吉岡 研一 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, ユニット長 (70321916)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 放射線 / DNA損傷 / 複製ストレス / エピゲノム / UV |
研究実績の概要 |
放射線被ばくはがんのリスク要因である。直接の影響はDNA損傷と考えられるが、『放射線で生じた“どのタイプの損傷”がどの様にがん化を促進しているのか』、未だに不明な点が多い。最近我々は、放射線に曝された細胞では、直接に生じた二重鎖切断(DSB)の修復後、複製ストレスに伴うDSBが蓄積し、これに伴ってゲノム不安定性リスクが上昇することを見出した。このため、結果的にクローン進化のリスクが上昇していた。このことからは、放射線ばく露に伴うリスクの作用点には“ゲノム不安定性の高リスク状態(複製ストレスに伴うDSBが修復され難い状態)の誘導”が含まれると考えられる。疑問なのは、『どうして高リスク状態(修復され難い状態)に陥るのか』という点である。そこで本研究では、“ゲノム不安定性リスクの高い細胞・ゲノム状態”の形成機構の解明を目指している。実際には、放射線影響のほか、UVばく露の影響の解析も実施している。 今年度の解析により、高リスク状態の誘導には、エピゲノム状態の変化(クロマチン修飾の変化)が介在していることが明確になってきた。重要なことに、この変化は放射線ばく露後、数日のうちに誘導されており、非常に早い誘導であることが示されている。現段階までの解析からは、少なくとも2種類のエピゲノム関連修飾の関与を認めている。 また、UVばく露の影響解析では、放射線の場合と同様、ゲノム不安定性のリスクが複製ストレスにともなって誘導されていることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実際の解析結果には驚きがあったが、研究自体は非常に順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今後、ゲノム不安定性の高リスク状態の誘導に関わるエピゲノム状態の変化(クロマチン修飾の変化)につき、その誘導に関わる修飾酵素の特定を目指す。さらに、その背景のDNA複製ストレスとの関係を明確にする。また、この影響は、広い放射線量で認められる影響であることが示されたが、ここでは、さらに、線量率とエピゲノム状態の変化(クロマチン修飾の変化)の関係を明確にすることも目指す。 また、少なくとも2種類のエピゲノム関連修飾の関与を認めている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究支出計画の中で、少し大きめの支出を必要とする計画を次年度に回したため、次年度使用額が生じた。 使用計画自体は、変化なく、基本的に、当初の申請の通りの使用を予定している。
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