研究課題/領域番号 |
21K12254
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
丹藤 由希子 東北大学, 加齢医学研究所, 助教 (70596212)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 生殖細胞 / エピゲノム / フタル酸エステル / マウス |
研究実績の概要 |
プラスチックの可塑剤として社会生活に普及しているフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(DEHP)の妊娠期の暴露は複数世代にわたる子孫の精子形成異常を誘発するが、その分子機序は不明であった。申請者はこれまでの研究で、DEHP母体暴露後のマウス生殖細胞で精子形成に関わる遺伝子の特異的なメチル化亢進を見出した。そこで本研究は、DEHPの遺伝子特異的なメチル化亢進による精子形成異常の誘導機構と、精子形成異常の世代間継承に関わるエピゲノム機構を解明することを目的とする。 二年目は、DEHP母体暴露後の胎仔生殖細胞における精子形成遺伝子の特異的メチル化亢進のメカニズムについて、ROSの増加が関わっている可能性を検証した。胎齢18日目のオス精巣細胞を単一化し、MEHPを添加した後の生殖細胞のROS量をROS検出蛍光試薬にて解析したところ、MEHP添加群にて有意なROSの増加を認めた。そこで、ROSの増加と精子形成関連遺伝子との関連性を調べるため、MEHP添加後の生殖細胞のバイサルファイトシーケンスを行うことを目指した。単一細胞化後の精巣細胞にMEHPまたはコントロールのDMSOを添加して培養したところ、6時間後以降でDMSO添加群での大幅な生殖細胞の減少を認めた。培養後の回収生殖細胞数とバイサルファイトシーケンス可能な細胞数を勘案し、MEHP添加から30分後でメチル化レベルを検証することとした。現在は細胞回収を行っており、回収でき次第バイサルファイトシーケンスに進む。 また,精子形成異常の世代間継承に関わるエピゲノム機構については、DEHP母体曝露されたF1およびF2精子精子におけるH3K9me3のChIP-seqのためのサンプル回収を完了した。ChIP-seqの条件検討ではポジティブコントロール遺伝子の濃縮が再現性良く見られる条件を見出すことができたため、速やかにChIP-seqを行うことを予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定していた二年目の実施項目のうち、ChIP-seqの条件検討が難航したため本実験サンプルを用いた解析まで至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
DEHP母体暴露後の胎仔生殖細胞における精子形成遺伝子の特異的メチル化亢進のメカニズムについては、胎仔生殖細胞の短期培養系へのMEHPおよびROS発生物質の添加によって精子形成関連遺伝子のメチル化が亢進するかを検証する。 精子形成異常の世代間継承に関わるエピゲノム機構については、F1とF2の精子でH3K9me3のChIP-seqを行い、コントロール群とDEHP群とで差のあるゲノム領域を抽出する。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画していたChIP-seqを実施する環境のセットアップに当初見込みよりも時間を要したため、次年度に実施することに変更した。よって次年度使用額が生じた。
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