研究課題/領域番号 |
21K12255
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
河崎 陽一 岡山大学, 大学病院, 薬剤主任 (40582101)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 注射薬 / 重合開始剤 / エストロゲン様活性 / エストロゲン受容体 |
研究実績の概要 |
これまで、我々は臨床現場で汎用されているプラスチック製医薬品容器に充填された注射薬中から 3 種類の重合開始剤 1-hydroxycyclohexyl phenyl ketone (HCHPK) 、Methyl 2-benzoylbenzoate (MBB) および 2-methyl-4’-(methylthio)-2-morpholinopropiophenone (MTMP) を検出した。インクや歯科用樹脂に使用されている重合開始剤の中には、内分泌かく乱作用を有するものが報告されており、我々の研究においても、上記の3 種類の重合開始剤ならびに2,2-dimethoxy-2-phenylacetophenone (DMPAP) 、2-ethylhexyl 4-(dimethylamino) benzoate (EHDAB) および2-isopropylthioxanthone (ITX) を含めた 6 種類の重合開始剤がヒト乳がん細胞株に対してエストロゲン様作用を示すことが明らかにしている。また、ヒト乳がん細胞株において、エストロゲン受容体 (ER) 拮抗薬と6 種類の重合開始剤を併用して E-screen assay を実施したところ、重合開始剤による増殖効果が抑制された。この結果から、これらの重合開始剤によるエストロゲン様作用は、ER を介したものであることが示唆された。 そこで、本研究では6種類の重合開始剤のヒト乳がん細胞株に対するER親和性を明らかにするため、ヒト乳がん細胞株を用いたレポーター遺伝子アッセイにより、重合開始剤の核内ERαへのアゴニスト作用の有無を検討した。その結果、6 種類の重合開始剤は、negative controlと比較して発光強度比の有意な増加を示した。この発光強度比の増加は、ER拮抗薬の併用によって有意に抑制された。このことから、重合開始剤は核内ERαに対してアゴニスト作用を示すことが示唆された。また、重合開始剤の核内ERαへの親和性は重合開始剤の種類によって差があることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請者は,すでに乳がん細胞株MCF-7に対して重合開始剤がエストロゲン様作用を有することを明らかにしていることから、同様の手法を用いてERα-RおよびKi67の発現に対する重合開始剤の影響を評価してきた。現在、乳がん細胞株MCF-7は順調に評価が進んでいるが,乳がん細胞家具T47Dは,細胞増殖率が低下しており、培養が遅れている。そのため,当初の予定よりやや遅れて研究が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
乳がん細胞株の安定した培養に努め,重合開始剤によるERα-R等の内分泌かく乱作用に重要な役割をもつタンパクの発現量についてウェスタンブロット法を用いて評価していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)乳がん細胞株T47Dの培養遅延が生じ,タンパク発現量の評価が遅れ,消耗品の購入費が低くなった。
(使用計画)次年度使用額は令和4年度交付額と合わせて,引き続きMCF-7およびT47Dを用いた重合開始剤による内分泌かく乱作用に重要な役割をもつタンパクの発現量の変化について評価していく予定である
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