研究課題
2021年度は、まず、2018年-2020年度科研費補助金基盤研究(C)(研究代表者:溝口出、課題名:化学物質の呼吸器アレルギー感作性を評価する新しい動物実験代替法の開発)で作製したヒト末梢血CD14+単球株CD14-MLについて、ドナーの異なる株を作製した。GM-CSFとIL-4で3日間培養し未成熟DCに分化誘導し、その後、LPSや OK-432などで刺激すると、どの細胞株もプライマリーの単球とほぼ同様に、DC の成熟化マーカーである共刺激分子CD86やCD80、MHCクラスIIの発現増強が見られ、DCが成熟化されることがわかった。次に、上記の研究で用いた代表的な皮膚と呼吸器感作性化学物質Oxazolone(OXA)とOrtho-Phthaldialdehyde(OPA)の他に、2,4-Dinitrochlorobenzene (DNCB)とTrimellitic anhydride (TMA)、Formaldehyde (FA)とHexamethylene diisocyanate (HDI)を、3次元DC共培養系に用いて、Th2分化誘導に重要なOX40リガンド(L)の他に、同じくTh2分化誘導に関与するサイトカインTSLPの受容体(R)であるTSLPRとIL-7Ra、IL-25の受容体であるIL-17RB、IL-33の受容体であるST2のmRNA発現誘導を比較検討すると、3つの呼吸器感作性化学物質で共通してOX40L発現を皮膚感作性化学物質に比べより強く発現増強し、さらに、OPA刺激ではST2も、TMAとHDI刺激ではTSLPRとIL-7Raの発現もより強く増強した。以上の様に、単球株CD14-ML由来の未成熟DCを用いた3次元DC共培養系でも、皮膚と呼吸器の感作性を識別できる可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
単球株CD14-ML由来の未成熟DCを用いた3次元DC共培養系でも、皮膚と呼吸器の感作性を識別できる可能性が示唆されたため、ほぼ計画の予定通り進んでいる。
2022年度ヒト単球株CD14-MLとプライマリーT細胞を用いた3次元DC/T共培養:ヒト単球株CD14-MLを用いた3次元DC共培養系で刺激したDC層にアロ反応性ナイーブCD4+T細胞を反応させ、5日後リアルタイムRT-PCRにより、T細胞の活性化マーカーCD69やIL-2、Th1分化マーカーIFN-g、Th2分化マーカーIL-4などのmRNA発現を調べる。代表的な呼吸器および皮膚感作性化学物質としてOrtho-phthaldialdehyde(OPA)とOxazolon(OXA)、Hexamethylene diisocyanate (HDI)とFormaldehyde (FA)、Trimellitic anhydride (TMA)と2,4-Dinitrochlorobenzene (DNCB)を用いて検討する。2023年度ヒト単球株CD14-MLとT細胞株を用いた3次元DC/T共培養系の検討 ① T細胞株の作製:上記の複数の単球株CD14-ML由来DCをOK-432刺激で成熟化し、ヒトアロ反応性CD4+T細胞をTh1およびTh2分化条件で頻回刺激し、アロ抗原特異的Th1/Th2細胞株を作製し、限界希釈法によりTh細胞株を得、そのサイトカイン産生量をELISAにより調べ、個々のT細胞株の性質を明らかにする。さらに、クローニングも行う。② 単球株CD14-ML由来未成熟DCとT細胞株を用いた3次元DC/T共培養系:上述の単球株CD14-ML由来未成熟DCとT細胞株を用いて、3次元DC/T共培養系に応用し、代表的な呼吸器および皮膚感作性化学物質としてOPAとOXAで刺激し、CD69やIL-2、IFN-g、IL-4の発現増強をリアルタイムRT-PCRにより調べ、OXA刺激で選択的にIL-4発現増強が見られる条件検討を詳細に行う。次に、複数の感作性化学物質を用いて検討する。
端数をピッタリ合わすことができなかったため。残金は、2022年度の消耗品代に加える。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件)
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