研究課題
2022年度は、ヒト単球株CD14-MLとプライマリーT細胞を用いた2ステップ3次元DC/T共培養を用いてその有効性を検討した。まず、ヒト単球株CD14-MLを用いた3次元DC共培養系で感作性化学物質で刺激後、DC層だけを新たなウェルに載せ、アロ反応性ナイーブCD4+T細胞を反応させ、5日後リアルタイムRT-PCRにより、T細胞の活性化マーカーCD69やIL-2、Th1分化マーカーIFN-g、Th2分化マーカーIL-4などのmRNA発現を調べた。代表的な呼吸器感作性化学物質としてOrtho-phthaldialdehyde(OPA)とHexamethylene diisocyanate (HDI)、Trimellitic anhydride (TMA)を用い、代表的な皮膚感作性化学物質としてOxazolon(OXA)とFormaldehyde (FA)、2,4-Dinitrochlorobenzene (DNCB)を用いて検討した。その結果、1度に呼吸器感作性と皮膚感作性化学物質1つずつの組み合わせで、濃度を複数ふって検討したところ、いずれの組み合わせでも、皮膚感作性化学物質に比べ呼吸器感作性化学物質の刺激で、IL-4発現が増強された。次に、個々のデータより、未刺激の溶媒のみのサンプルに対する発現変動を相対値で表し計算したところ、溶媒であるDMSOの濃度の影響も見られたが、これら3種類ずつで比べても、皮膚感作性化学物質に比べ呼吸器感作性化学物質の刺激で、IL-4発現の増強がみられた。これらの結果は、溶媒のみに対する比で、1度に一緒に計らずとも複数の化学物質の評価が可能であることを示唆しており、評価系として有効である可能性が高い。
2: おおむね順調に進展している
ヒト単球株CD14-MLとプライマリーT細胞を用いた2ステップ3次元DC/T共培養系の有効性が示されたので、ほぼ計画の予定通り進んでいる。
2023年度は、さらに汎用性を向上させるため、ヒト単球株CD14-MLとT細胞株を用いた2ステップ3次元DC/T共培養系の確立とその有効性について検討を行う。① T細胞株の作製:上記の複数の単球株CD14-ML由来DCをOK-432刺激で成熟化し、ヒトアロ反応性CD4+T細胞をTh1およびTh2分化条件で頻回刺激し、アロ抗原特異的Th1/Th2細胞株を作製し、限界希釈法によりTh細胞株を得て、そのサイトカイン産生量をELISAにより調べ、個々のT細胞株の性質を明らかにする。さらに、クローニングも行う。② 単球株CD14-ML由来未成熟DCとT細胞株を用いた2ステップ3次元DC/T共培養系の構築:上述の単球株CD14-ML由来未成熟DCとT細胞株を用いて、DC/T共培養系に応用し、代表的な呼吸器および皮膚感作性化学物質としてOPAとOXAで刺激し、CD69やIL-2、IFN-g、IL-4の発現増強をリアルタイムRT-PCRと、培養上清のELISAにより調べ、OXA刺激で選択的にIL-4発現増強が見られる条件検討を詳細に行う。次に、複数の感作性化学物質を用いて検討する。③ 数多くの感作性化学物質での検討:さらに複数の呼吸器と皮膚感作性化学物質を用いて、ヒト単球株CD14-MLを用いたDC/T共培養系、および、ヒト単球株CD14-MLとT細胞株を用いた2ステップ3次元DC/T共培養系の有効性を検討する。
使用金額の端数を合わせることができなかったため、次年度使用が生じた。残金は、次年度の消耗品代に加えて使用する計画である。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件)
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