研究課題
本研究は、近年我々の研究グループが開発した迅速組織透明化法(RAP)を用い、発生毒性試験に応用可能な組織構築の定量的解析法を確立することを目的としている。初年度となる令和3年度は下記の内容について検討を行った。RAPによる組織透明化を応用した組織構築の定量的解析法を確立するにあたり、成獣マウス脳、胎盤、およびゼブラフィッシュ眼球などで検討を行った。まず、脳における細胞増殖を定量するため、成獣マウスにEdUを投与し、2時間後に深麻酔下で4% PFAにて灌流固定した。脳を採取し、矢状断凍結切片を作製した。切片をRAP固定液に浸漬して透明化を行った後、EdU標識をClick反応により可視化し、シグナルの検出と定量解析を行った。その結果、脳組織中のEdU標識は、RAP固定液で透明化処理を行った後でもClick反応による検出が可能であり、RAP組織透明化法が脳におけるニューロン新生の解析に応用できることが明らかとなった。現在、既にRAP処理を行った組織での免疫組織学的解析に使用可能であることを確認している抗GFAP抗体、抗DCX抗体、および抗NeuN抗体等とEdU標識の検出を組み合わせた蛍光多重染色とシグナルの定量化を試みている。本検討により、RAPによる組織透明化の応用範囲が広くなり、多重染色による組織構築の定量解析の有用性が高まることが期待できる。また、RAP固定液を用いて、胎盤のホールマウント染色標本作製の検討も行った。さらにRAP固定液で透明化したゼブラフィッシュのホールマウント標本に蛍光核染色を施し、各部位での組織構築の構造、特に眼球における網膜の組織構築の描出の検討も実施中である。
2: おおむね順調に進展している
本研究では、発生毒性試験に応用可能な組織構築の定量的解析法を確立することを目的としているが、組織構築の定量解析に向けて各種臓器での染色の検討、および画像の取得が順調に行われている。よって、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
今後、さらに検討を進め、発生毒性試験に応用が可能な組織構築定量法を確立したい。RAP固定液により組織を透明化することにより、従来よりも厚い組織での組織構築の定量解析を目指すが、撮像装置のワーキングディスタンスの問題や組織透明化処理による染色性の低下および組織構築の変化について、正しく評価、分析、解決することが重要であり、これらの問題をクリアすることで簡便で汎用性の高い手法が確立できると考えられる。
コロナウイルス感染症拡大の影響で、参加予定だった学会がすべてオンライン開催となり、オンラインでの参加・発表であったため、予算として計上していた旅費を使用しなかったことが理由の1つである。次年度以降に国内および国際学会に参加する予定であり、その旅費に充てる予定である。また、実験補助の人件費を計上していたが、コロナウイルス感染症拡大の時期だったため、雇用を先送りにした。次年度以降に研究補助の費用に充てる予定である。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (3件)
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