最終年度の研究では、DPYS発現抑制によるカドミウム毒性増強作用の詳細なメカニズムを解析した。ヒト由来腎近位尿細管上皮細胞(HK-2細胞)を用いて、カドミウムが細胞内DPYSのmRNAレベルに及ぼす影響およびdihydropyrimidinase(DPYSコーディングタンパク質)レベルに与える影響を調べた。また、dihydropyrimidinaseの基質であるチミンおよびウラシルの前処理がカドミウム毒性に及ぼす影響も検討した。 mRNAレベルは、リアルタイムRT-PCR法を用いて、タンパク質レベルは、western blotting法を用いて調べた。また、細胞生存率はalamarBlue法で測定した。 DPYS mRNAレベルは、カドミウムの6時間処理により、減少傾向を示した。DPYS siRNA処理は、dihydropyrimidinaseタンパク質レベルをまた、dihydropyrimidinaseタンパク質レベルの6時間のカドミウム処理により若干減少する傾向を示した。また、チミンの48時間前処理は、カドミウム毒性に影響を与えなかったが、1 mMのウラシル処理は、カドミウム毒性を増強させた。なお、チミンおよびウラシルを同時に前処理した結果、ウラシル単独の前処理と同様なカドミウム毒性増強作用を示した。 以上の結果より、近位尿細管細胞におけるCd毒性は、DPYSの細胞レベルまたはその基質のレベル変動によって調節される可能性が示唆された。
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