研究課題/領域番号 |
21K12266
|
研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
濱崎 活幸 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (90377078)
|
研究分担者 |
團 重樹 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (20443369)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 温暖化 / 温度耐性 / 温度適応 / カニ類 / イモガイ類 |
研究実績の概要 |
本研究では、人に危険な南方系の有毒カニ類とイモガイ類は、どのような環境(水温)条件で北方へ分布を拡大し、定着できるかを明らかにする基礎として、幼生や成体の温度適応を明らかにし、海洋における幼生の分散実態を遺伝的集団構造解析で推察する。そのために、本年度は以下の研究課題に取り組んだ。(1)カノコオウギガニ幼生の温度適応:石垣島産の抱卵雌からふ化した幼生を5段階の水温(20、23、26、29、32℃)で飼育した。その結果、稚ガニまでの生残はみられなかったものの、ゾエア期の生残率は26℃近辺で高く、発育臨界温度は15程度と推定された。(2)イモガイ類卵の温度適応:飼育して得たイボシマイモとゴマフイモの卵嚢を水温別(18、21、24、27、30、33℃)に培養した結果、イボシマイモは21~30℃で、ゴマフイモは24~30℃でふ化し、房総半島まで分布するイボシマイモの卵の方が低温側に適応していることが明らかとなった。(3)イモガイ類幼生の温度適応:石垣島産ゴマフイモからふ化した幼生を水温別(18、21、24、27、30、33℃)に培養した結果、生残と発育の適正水温は27~30℃、低温側の理解発育温度は19℃と推定された。(4)イモガイ類幼生の変態誘起方法の検討:房総半島産ベッコウイモからふ化した幼生を予備的に自然海水と人工海水で飼育したところ、自然海水で飼育した場合に稚貝への変態・着底がみられた。(5)遺伝的集団構造の比較:スベスベマンジュウガニをモデル種として、石垣島産と房総半島産個体のミトコンドリアDNAのCOI領域に塩基配列に基づく、遺伝的集団構造を比較した結果、集団間に有意な分化がみられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カニ類を対象とした研究では、亜熱帯に生息するカノコオウギガニ幼生の飼育を始めて試みた結果、稚ガニまで飼育できなかったものの、温度適応を明らかにすることができた。さらに、房総半島産と石垣島産スベスベマンジュウガニ集団において、遺伝的な差異が検出され、昨年度まで明らかにした低温耐性の違いが遺伝的際に基づくものである可能性が示唆された。 イモガイ類を対象とした研究では、幼生の飼育が可能になり、温度別の飼育実験によって亜熱帯種の温度適応が明らかとなった。また、幼生の変態を誘起する条件が示唆された。
|
今後の研究の推進方策 |
カニ類を対象とした研究では、入手が容易なカノコオウギガニを材料に卵の温度適応について検討を進める。また、スベスベマンジュウガニとカノコオウギガニ幼生の温度適応を代謝応答の観点から比較するために、無給餌条件下で調査する。 イモガイ類を対象とした研究では、これまで対象とした温帯種のベッコウイモ、亜熱帯種のゴマフイモとマダライモ卵の温度適応に関する実験を繰り返し、さらに実験精度を高める。また、自然海水を用い、ベッコウイモ幼生を温度別に飼育し、ゴマフイモ幼生の温度適応と比較する。
|