研究課題/領域番号 |
21K12268
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
安田 龍介 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 助教 (50244661)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 次世代自動車 / 光化学汚染 / 都市気象 / 数値シミュレーション / 人体熱収支 |
研究実績の概要 |
シナリオ分析については,文献調査により既往研究の検討事例の収集を継続して行った.気象計算と大気汚染解析に用いる数値モデルについては,これまで用いてきたシミュレーションシステムを刷新する必要が生じたため,検証計算のやり直しを進めている.具体的には,気象モデルに関しては数値モデルを最新版にあらため,これまで独自開発して用いてきた土地利用データや人工排熱データを組み込むシステムを移植した.過去に行ったシミュレーションと同じケースの計算を行うことで,移植が適正に行われていることを確認した.また,これまでは気象計算と大気汚染計算の連携をオンライン連成計算で行ってきたが,新システムでは計算の効率化を考慮して大気汚染計算をオフラインで行うこと試みつつある.従来用いていたものと異なる大気汚染モデルを採用することとした関係で,入力データベースも更新することとし,排出量インベントリの新規収集,および,計算モデルに入力するためのプリプロセッシングシステムの導入を行っており,システムのチェックを進めている段階である.ヒートアイランド問題に関連して,特に夏季における暑熱ストレスが人体にもたらす影響について考慮することを目指し,暑熱環境下による人体熱負荷の評価ツールとして人体熱数値モデル(以後「人体熱モデル」と呼ぶ)を導入することとした.人体熱モデルに関しては,既存のモデルがいくつか存在するが,その中で最新型のJOS-3モデルを採用した.ただし,過渡応答に関する検討例が少なく,また.季節による生理応答の違い(いわゆる季節順化)を考慮することの必要性が明らかでないことから,人工気候室を用いた被験者実験を実施した.その結果,発汗機能および体温を支配する基準温度の設定に検討の余地があることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
以下の点によりシステム構築およびシナリオ作成に遅れが生じている. ・従来使用していたシミュレーションシステムのOSが不調となり,システム変更を余儀なくされたため,シミュレーションシステムを一から組み直すこととなった.これを契機にシステムの見直しを行ったが,システムの安定運用のチェックに時間を要すこと. ・我が国のエネルギー政策,特に,原子力発電への依存度や延長利用に関して大きな方針の転換があったが.この方針が今後も維持されるか否かは不透明であり,電源構成の長期展望に関係するだけに軽々に判断できないこと. ・電力が自由化されたことにより,従来の電力統計と近年の統計との間の断絶や読み替えが必要であり,取り扱いに検討を要すること. ・国際情勢と今後のエネルギー調達の関係,欧州におけるEVシフト機運の減退,新型コロナウイルス感染症が直近統計に及ぼしている影響,といった当初想定していなかった新たな要素の扱いについて検討を要すこと.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は,まず早急にシミュレーションシステムの更新を終えるべく,京阪神地域における都市気象と光化学汚染を対象に数値モデルによる現況再現シミュレーションを行い,観測データとの整合性チェックを通してモデルのパラメータのチューニングを行う.EVシフトの影響評価については,収集した資料に基づき2050年までを対象とする電源構成の将来シナリオを作成し排出量と排熱量の推計を行う.再生可能エネルギーや小規模分散型発電の導入について,感度解析的に複数のケースを設定し,都市気象場と光化学汚染の予測シミュレーションを行う.都市気象場については,夏季における暑熱環境を対象に,都市生活者の人体熱負荷について人体熱モデルを利用した影響評価を行う.またこれに関連して,人体熱モデルの適用性を拡充するため,引き続き暑熱環境下における被験者実験も実施する.大気汚染に関しては日中のオゾン濃度や光化学レジームを対象に評価指標を設定し,EVシフトの影響評価を行う.各種シナリオの結果を比較することにより,EVシフトが大気環境に与える影響をとりまとめる.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症の影響でいくつかの研究発表会がリモート開催となり旅費が一部不要となった.また,個人的に身体の故障により出張が困難な状況になりつつある.未使用額は資料収集や追加の計算機資源の調達に活用する計画である.
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