前年度に作製した大気浮遊粒子状物質(PM10)の上皮サイトカインthmic stromal lymphopoetin (TSLP)の遺伝子プロモーター活性を評価するラット気道上皮細胞を用いて、京都市において捕集したPM10の抽出物のTSLP誘導能を測定した。まず、2018年6月と2019年3月に捕集したPM10(2検体)の抽出物を用いて細胞を処理し、TSLP遺伝子プロモーター活性を測定した。その結果、いずれの抽出物でも14.4 m3/ml以上で用量依存的に遺伝子プロモーター活性が上昇することが確認できた。そこで、2018年6月から2019年5月までの1年間にわたり捕集したPM10(50検体)についてTSLP遺伝子プロモーター活性を測定した。その結果、すべての週のPM10において、陰性対象と比較して有意に高いプロモーター活性が確認され、2019年2月第1週に捕集したPM10の抽出物において最も高いプロモーター活性がみられた。また、PM10中の成分として、エンドトキシン、タンパク質、各種水溶性イオンの濃度を測定したところ、エンドトキシン濃度は、2019年5月第3週に最も高く、2018年6月第1週に最も低くかった。タンパク質濃度は2019年2月第4週に最も高く、2018年10月第2週に最も低かった。硫酸イオンとアンモニウムイオンはいずれも2018年7月第3週に濃度が最も高かった。一方、硝酸イオン、カリウムイオンおよびカルシウムイオンは、いずれも冬季に高濃度であった。PM10のTSLP遺伝子プロモーター活性とPM10中の成分の濃度との関係を解析したところ、プロモーター活性とタンパク質、硝酸イオン、アンモニウムイオンの各濃度の間に有意な正の相関関係がみられた。
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