研究課題/領域番号 |
21K12280
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
村野 宏達 名城大学, 農学部, 教授 (00570798)
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研究分担者 |
前林 正弘 名城大学, 農学部, 教授 (00402488)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 腐植物質 / 溶存有機物 / 水素結合 |
研究実績の概要 |
弱酸基を持つ有機化合物の負書物質への吸着に負電荷支援型水素結合((-)CAHB))が果たす役割を調べるあたり、初年度は、腐植物質同心の相互作用に(-)CAHBが働いているかどうかを調べることとした。 腐植物質同士の間の相互作用に(-)CAHBが働いているとすれば、腐植物質のpKa付近で(-)CAHBが最も結ばれ、その結合は超分子の内部に隠され、表面の電荷が下がると考えた。そこで、国際腐植学会で頒布している標準フミン酸(Suwannee River Humic Acids III:SRHAIII)のpH3~10の間の表面電荷をイオン強度一定に調整して調べた。一般的に剛直なコロイド粒子の表面電荷は、pHの増加とともに負の電荷が大きくなる。SRHAIIIの表面電荷は、pHの調整直後は、pHの上昇とともに負の電荷が大きくなる傾向を示したものの、経時的にpKa付近で上昇する傾向が見られた。 次に、種々の長さのアルキル鎖にカルボキシ基を有す低分子の有機酸をSRHAIIIの水溶液に添加し、イオン強度を一定に調整してpH3~9の表面電荷を調べた。その結果、SRHAIIIの表面電荷が上昇した部分の下降が、低分子有機酸の濃度の上昇に伴って大きくなる傾向を示した。 さらに、サイズ排除クロマトグラフィーでpHおよび低分子有機酸の添加によるSRHAIIIの平均分子量の変化を調べた。その結果、SRHAIIIの平均分子量は、低分子有機酸の添加により従来考えらえて来た水素結合が結ばれるpHの範囲ではなく、SRHAIIIのpKa付近で、より小さくなる傾向を示した。 これらの現象が(-)CAHBによるものかどうかを分光学的手法を用いて解明していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、腐植物質同士の間で(-)CAHBが結ばれているかどうかに着目して研究を進めた。腐植物質同士の間で(-)CAHBが結ばれていると仮定した場合に観察されると考えられる表面電荷の変化が、予想どおりに観察されるとともに、低分子有機酸によって、腐植物質同士の(-)CAHBが阻害された痕跡も観察された。 これらの研究成果は、2021年度に国際学会で発表し、2022年度にも国内の学会で発表する予定であり、研究はおおむね順調に進捗している。 今後は、初年度に購入した全反射赤外分光法(ATR-FTIR)のアタッチメントを用いて、分光学的に(-)CAHBの関与に関する研究を進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に引き続き、腐植物質の表面電荷の測定およびサイズ排除クロマトグラフィーによる腐植物質同士の間に(-)CAHBが働いているかどうかを調べ、研究期間内に国際誌への投稿を目指す。 初年度は、種々の長さのアルキル鎖にカルボキシ基を有す低分子有機酸を用いて研究を進めてきたが、2~3年目には農薬の基本骨格を持つ有機酸も用いて、研究を進め、これらの有機酸の腐植物質との相互作用に(-)CAHBが果たす役割を明らかにして行く。 また、購入したATR-FTIRを用いた分析方法を2~3年目で確立し、分光学的に(-)CAHBの関与を明らかにしていく予定である。
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