研究課題/領域番号 |
21K12283
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研究機関 | 和歌山工業高等専門学校 |
研究代表者 |
森田 誠一 和歌山工業高等専門学校, 生物応用化学科, 准教授 (70332054)
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研究分担者 |
土井 正光 和歌山工業高等専門学校, 生物応用化学科, 教授 (30217608)
西本 真琴 和歌山工業高等専門学校, 生物応用化学科, 准教授 (70609057)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | リポソーム / 脂質二分子膜 / モデル細胞膜 / 刺激応答 / 環境毒性評価 / 農薬 |
研究実績の概要 |
カルセイン放出速度に基づく毒性予測に採用したDPPC/DOPCリポソームと農薬との相互作用の等温滴定熱量(ITC)測定による定量化を試みた。DPPCおよびDPPC/DOPC(2/1)リポソームを農薬溶液に滴定すると発熱が観測された。その滴定曲線から算出したパラメータを比較すると,いずれの系でもエンタルピー項の寄与に比べてエントロピー項の寄与が大きく非特異的相互作用である疎水性相互作用が優勢であると分かった。エンタルピー項はDOPCの含有量および農薬の種類によらずほぼ一定の値であり,極性基が共通であることに矛盾しなかった。一方,エントロピー項の寄与はDPPCリポソームにおいて,農薬の疎水性に依存して小さくなった。示差走査熱量(DSC)測定では疎水性の大きいものほど相転移エンタルピーを低下させていることから,結合による安定化と膜構造の攪乱が相殺している可能性が示唆された。ITC測定においてエンタルピー項が小さかったことからDPPC/DOPCリポソームにおいては極性基における静電相互用や水素結合の影響が見られなかった。このため,両性イオンのPCとは異なる陰イオンで負電荷を有するPGを用いてカルセイン放出実験を実施した。DPPC/DPPG混合リポソームにおいてはDPPGの含有量にかかわらずカルセインの放出速度に大きな違いは見られず,長い炭化水素鎖が測定温度において安定な構造を形成していることが原因と考えられた。負電荷を有するDPPGの添加は極性基の静電的反発によってカルセインの放出速度を変化させると考えられたがその効果は小さく,DSC測定の結果からも疎水性の農薬の存在が膜の安定性を向上させたものと考えられた。また,末端に分岐鎖を有する脂肪酸を混合した二分子膜も検討し,基礎物性を測定したところ膜流動性に与える影響が不飽和結合とは異なることが分かった。
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