研究課題/領域番号 |
21K12291
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
池本 良子 金沢大学, 地球社会基盤学系, 教授 (40159223)
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研究分担者 |
松浦 哲久 金沢大学, 地球社会基盤学系, 准教授 (90771585)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 排水処理 / アナモックス / 部分硝化 / 無曝気1槽型 |
研究実績の概要 |
Anammox細菌を用いた窒素除去法は,省エネルギーな排水処理方式として注目されている.Anammox細菌を用いた窒素除去法は,省エネルギーな排水処理方式として注目されている.申請者らは,排水を2流路で供給することにより,槽内にAnammox細菌とアンモニア酸化細菌(AOB)の増殖に適した場所を提供するという新しい発想のリアクターを用いた窒素除去プロセスを提案した. 本研究では,さらなる省エネルギー化と安定的な処理法の確立を目指して,微生物付着性の高い炭素繊維担体を用いた無曝気2流路1槽型反応槽による処理法を開発すした.装置上部から懸垂した炭素繊維に排水を散水することにより,曝気を行わずに空気を供給してアンモニア酸化を行う.負荷量(濃度が一定の場合は排水の流量)と散水高さ(炭素繊維の懸垂部の長さ)により供給空気量を制御できることから,亜硝酸酸化を抑制して亜硝酸までの酸化を行うことが可能である(亜硝酸化が可能であることはすでに確認済み).空気供給量が不足する場合は,処理水の循環を行うこともできる.装置液相部に排水の一部を直接供給してanammox反応を促進する.各流路からの排水流量比を調整することにより除去率を向上させることが可能である.本研究では,提案した処理プロセスを確立するために,室内実験装置を用いて,最適運転条件を検討するとともに,微生物のすみ分けについて,明らかにするものである. 今年度は,まず,無曝気リアクターによる部分硝化条件(炭素繊維への散水条件および窒素負荷等)を検討した.次に,上部からの散水流量と装置へ供給流量の比率,および処理水の循環の影響を検討し,最適化を行った.実験の各段階において,担体の様々な箇所に付着した生物膜からDNAを抽出し,マイセックを用いて16S rRNA遺伝子を標的とした菌叢解析を行い,微生物物のすみわけ状況を明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は1流路型および2流路型の装置を立ち上げ,スタートアップ特性と最適な運転状況を明らかにした.その結果,下水汚泥のみを種汚泥として上端からの散水のみで,100日程度の馴養により,部分硝化とアナモックスを同時に行うことが可能であった.液相からの循環の効果は低く,上部からの散水流量と炭素繊維高さに除去速度は依存することを明らかにした.一方,2流路型のリアクターでは,下層部化からの基質の供給により処理水質が悪化することから,効果が低いことも明らかにした.両装置内の炭素繊維上に増殖した生物膜のDNAを抽出し,マイセックによる菌叢解析を行った結果,上部からの散水により,炭素繊維気相部にアンモニア酸化細菌が液相部にアナモックス細菌が増殖するというすみわけを誘導することができたが,液相部からの循環によりそのすみわけが崩壊することも明らかとなった.以上の結果より,当初の計画のリアクターの構築と最適条件の検討を行うことができたと判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
現在,上部からの散水流慮を増加させることにより窒素負荷を増加させて,運転を継続することにより,さらなく反応の高速化をめざしている.今後は,段階的に微生物叢の解析を行い,反応機構をさらに明らかにするとともに,有機物の添加の影響についても検討を行う計画である.
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次年度使用額が生じた理由 |
実験は順調に進んでいるが,国内会議はオンラインとなり,国際会議は延期となったため,旅費が執行できなかったが,2022年度はこれらが開催される予定であることから,執行予定である.
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