研究課題/領域番号 |
21K12296
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
宮武 宗利 宮崎大学, 工学部, 助教 (40315354)
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研究分担者 |
塩盛 弘一郎 宮崎大学, 工学部, 教授 (80235506)
松根 英樹 宮崎大学, 工学部, 准教授 (10380586)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 無機ヒ素の無毒化 / 高メチル化活性カプセル / ヒ素メチル基転移酵素 |
研究実績の概要 |
毒性の高い無機ヒ素はメチル化しメチル化有機ヒ素に変換することで無毒化できる。しかし、無機ヒ素のメチル化効率の低さとコストの高さから実用化には至っていない。申請者は微生物の機能を利用して無機ヒ素をメチル化することで、それらの問題が解決できると考えた。これまでに無機ヒ素をメチル化できるヒ素メチル化細菌のヒ素メチル基転移酵素(arsM)を直接で使うことで、メチル化有機ヒ素への変換効率の向上を図ってきた。そこで本研究は、直接酵素を使う方法で問題であった酵素の耐久性を向上させるために、arsMを内包した高メチル化活性カプセルの開発を目的として実施するものである。 令和3年度では酵素を内包した多孔質カプセルの調製方法を検討した。このカプセルは酵素溶液を内水相として、W/O/Wエマルションを調製し、有機相に含まれるモノマーを重合させてカプセル化するものである。酵素の失活を抑えるために、モノマーの重合ではLEDライトによる光重合で行う。さらに、カプセルからの酵素の漏れを少なくするために、カプセルの表面をナイロン膜で覆うように設計されている。これまでの研究で、添加したarsMの50%程度の活性しか示さなかった。そこで令和3年度は、酵素活性を維持した多孔質カプセルを調製するために、α-グルコシダーゼを使って調製方法を検討した。その結果、W/Oエマルション作成における超音波処理時の時間及び温度、W/O/Wエマルション作成時及び重合時の撹拌速度が多孔質カプセルの調製に深く影響していることが分かった。また、酵素の固定化に使用するarsMの酵素溶液は、高活性カプセルを調製するために出来るだけ高活性のものが必要となる。そのため、令和3年度は現在使用している宿主大腸菌DH5αからより大量発現が可能な宿主大腸菌BL21に組み換え直した。これにより、効率的に高活性の酵素溶液を調製できると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
arsMを内包した高メチル化活性カプセルを開発するために、本研究ではこれまでに調製したことがある多孔質カプセルで令和3年度は実施した。これまでの研究で、arsMを内包したこのカプセルを使って無機ヒ素をトリメチルアルシンオキシドに変換することができたが、添加したarsMの50%程度の活性しか示さなかった。そこで令和3年度は、酵素活性を維持した多孔質カプセルを調製するために、α-グルコシダーゼを使って調製方法を検討した。その結果、W/Oエマルション作成における超音波処理時の時間及び温度については最適な条件を決定することができた。しかし、W/O/Wエマルション作成時及び重合時の撹拌速度については最適条件を見出すには至らなかった。そのため、酵素活性を維持した多孔質カプセルの調製方法を確立することができていない。 また、酵素の固定化に使用するarsMの酵素溶液は、高メチル化活性カプセルを調製するために出来るだけ高活性のものが必要となる。そのため、令和3年度は現在使用している宿主大腸菌DH5αからT7/lac プロモーターによる大量発現が可能な宿主大腸菌BL21に組み換え直した。しかし、arsMの発現量はまだ確認できていない。 令和3年度は、さらに新規なヒ素メチル化活性を有する微生物の探索も行った。その結果、新たに宮崎県内の土壌からヒ素メチル化細菌Cellulomonas sp. K31株を分離し、ヒ素に対する特性を明らかにすることが出来た。その結果、K31株は、メチル化された有機ヒ素化合物の割合がこれまでのヒ素メチル化細菌と比較して最も高い値を示した。今後、本菌株についても遺伝子組み換えを実施して、arsMの酵素溶液を調製していきたい。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は、令和3年度に出来ていなかった多孔質カプセルの調製方法の最適化を行うために、W/O/Wエマルション作成時及び重合時の撹拌速度について検討する。これにより、酵素活性を維持した多孔質カプセルの調製方法を確立することができる。この方法を用いて、arsMを内包したカプセルを調製しメチル化活性を測定する。さらに、調製方法を修正することで、arsMを内包したカプセルのメチル化活性の向上を図っていく。 大量発現が可能な宿主大腸菌BL21に組み換え直した組み換え大腸菌のarsMの発現量を確認し高活性の酵素溶液を調製する。これにより、高活性カプセルの調製に必要なarsMの酵素溶液をいつでも提供できるようになる。 令和3年度に分離したメチル化活性の高いCellulomonas sp. K31株のarsM遺伝子を持つ組み換えプラスミドを作製し、組み換えプラスミドを宿主大腸菌BL21に形質転換し、arsM遺伝子の発現を試みる。これにより、これまでのarsMの酵素溶液より高活性の酵素溶液を調製することが可能になると考えられる。 酵素内包シリカカプセルは、糖ナノ粒子を犠牲母材に用いることで酵素とシリカ膜の間に「空間」を設け、多種多様な酵素を全く失活させずにカプセル化する方法である。そこで令和4年度はarsM内包シリカカプセルを調製しメチル化活性を測定する。これにより、酵素内包シリカカプセルがarsMに応用可能であるのかを評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 令和3年度に計画していた実験が実施できなかったため。 (使用計画) 令和3年度に実施できなかった実験の消耗品として、次年度使用額分を使用する。翌年度分は令和4年度の実験計画に基づいて使用する。主に、カプセルの調製と酵素調製・反応用の試薬やガラス器具等の消耗品費として使用する予定である。
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