研究課題/領域番号 |
21K12297
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
武尾 正弘 兵庫県立大学, 工学研究科, 教授 (40236443)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ビスフェノールS / ノニルフェノール / 微生物分解 / フェノールスルホン酸 / ハイドロキノン / ハイドロキノンスルホン酸 / 酸化酵素 / 固定化 |
研究実績の概要 |
本研究は、工業的に重要でありながら、内分泌撹乱作用が疑われる、ビスフェノールS(BPS)の迅速な生物分解系を構築するために、BPSを分解できるノニルフェノール(NP)酸化酵素の遺伝子(nmoA)と同酵素の分解で生成する中間体、ハイドロキノン(HQ)、フェノールスルホン酸(PS)及びハイドロキノンスルホン酸(HQS)に対する分解遺伝子や分解菌を組み合わせて完全分解系を構築することを目的としている。 HQ分解菌Pseudomonas putida TSN1株にnmoAを導入し、BPSを分解させたところ、BPSは効率よく分解され、HQは蓄積しなかったが、PS及びHQSを中間体として蓄積した。これに、PS分解菌Cupriavidus sp. PSY7株及びHQS分解菌Delftia sp. HQS1株を用いてさらに分解させたところ、これら中間体が完全に消失した。以上の結果から、3つの菌株を用いてBPSの人工分解系の構築が可能であることを示せた。 一方、Delftia sp. HQS1株は、HQSに加え、PSも分解できることがわかったため、受容菌としてその詳細をさらに検討した。ゲノム解析の情報から、両者の初期分解に関わる遺伝子を同定し、組換え大腸菌及び遺伝子破壊株でその機能の実証を行った。 これらの菌株の固定化菌を用いた人工BPS分解系を構築する予定であったが、令和3年度に、BPSを単一炭素源として資化できる真菌Exophiala sp. BPS1株が分離できたことから、固定化菌を含め、本菌株のBPS分解を先に検討した。この菌株は120mg/LのBPSをほぼ2週間で分解し、理論炭素量の73%の溶存炭素量の減少と理論硫黄量の55%の硫酸イオンの生成を認めた。さらに、この菌株の菌体をアルギン酸で固定化したところ、800mg/LのBPSをわずか48hで分解できることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
極めて難分解性であり、これまで分解菌の報告がほとんどない状態のBPSに対して、人工複合分解微生物系でBPS分解を達成することができた。また、これまでに報告のない高濃度のBPSを単一で分解できる菌株が新たに分離できたため、この菌株によるBPS分解の検討を先行した。その結果、この菌株の固定化により、これまでに実施例のない非常に高い濃度のBPSを短時間かつ繰り返し分解できることが明らかとなり、この物質の製造メーカーとともに令和5年2月に特許出願に至った。
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今後の研究の推進方策 |
nmoA遺伝子を含む、人工複合微生物系によるBPSの分解は達成できたが、単一菌の固定化菌による高濃度BPSの分解系の構築に成功したため、人工複合微生物系の方は、これ以上固定化には進まず、nmoAから生産されるNmoAタンパク質の酵素的特徴づけ、さらには、HQS/PS分解菌Delftia sp. HQS1株のHQS及びPS分解機構の解明に取り組む。 また、可能であれば、単一菌株でBPSを分解できるExophiala sp. BPS1株のBPS分解機構の解明にも取り組む。
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