研究課題/領域番号 |
21K12298
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
相澤 朋子 日本大学, 生物資源科学部, 講師 (60398849)
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研究分担者 |
浦井 誠 東京農業大学, 生命科学部, 准教授 (20398853)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | アルミニウム / 金属耐性 / リン酸可溶化 / 膜脂質 |
研究実績の概要 |
酸性土壌では、酸性に起因する様々な植物生育阻害要因が複合し、作物品種の栽培が困難である。なかでも、東南アジアに多く存在するpH 1-4という強酸性を示す酸性硫酸塩土壌は農業上特に深刻である。本研究では、ベトナムの酸性硫酸塩土壌に適応するイネ科植物の根表面から得たAcidocella aluminiidurans AL46株を用いている。同菌は、酸性により土壌から溶出して問題となるアルミニウム・マンガン等の耐性濃度が既報と比較して最も高い菌株であるが、その強烈な耐性・適応メカニズムは全く分かっていない。これまでに、以下の実験を行っている。 【実験 1】 アルミニウム存在下での不溶性リン酸塩可溶化に関わる分子の同定:酸性、かつアルミニウム存在下で有機酸とシデロフォア様分子が生産されることを確認した。この分子の構造について検討している。【実験 2】 アルミニウム存在下で大きく変化する細胞膜脂肪酸の解析:アルミニウム存在下で、シクロプロパン環を含む脂肪酸の比率が大きく変化すること、これにより膜透過性が変化すること、さらにシクロプロパン脂肪酸生合成を阻害する試薬を用いて培養すると、アルミニウム耐性が変化することを確認した。【実験 3】 アルミニウムの輸送に関わるトランスポーターの存在の検討:AL46が持つ2種のアンモニウムトランスポーターの解析を通じて、AL46 のもつトランスポーターを大腸菌内で発現させることが出来るようになった。この2種、およびその一部のアミノ酸を変化させたトランスポーターの性質を解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでショットガンプロテオームでは、ゲル内で酵素消化する手法を採用していた。しかし、ゲル片の大きさのわずかな差や、生育条件によるタンパク質の発現量の差などによりゲル片ごとの比較は困難であった。現在は使用する界面活性剤の種類や濃度の最適化を実施中であり、今後は複数サンプルの処理が可能になったため、令和3年度の遅れを取り戻しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、以下のような実験を計画している。 【実験 1】 アルミニウム存在下での不溶性リン酸塩可溶化に関わる分子の同定: 酸性条件下で不溶性を示すリン酸アルミニウムはリン酸カルシウムを可溶化する既報の有機酸(クエン酸やリンゴ酸など)によっては可溶化されない。AL46株は、これら不溶性リン酸を可溶化し、コロニー周辺にクリアゾーンを形成する。このクリアゾーン形成を指標に、不溶性リン酸可溶化物質を精製しているため、GCMSやLCMSMSなどの質量分析計も用いてその構造を解析したい。 【実験 2】 アルミニウム存在下で大きく変化する細胞膜脂肪酸の解析: AL46株はアルミニウム存在下で、その細胞から抽出される脂肪酸の組成が大きく変化す ることが、予備的試験で判明している。この脂肪酸組成は、シクロプロパン脂肪酸の生合成を阻害することで変化する。シクロプロパン脂肪酸とアルミニウム耐性の関係についてAL46株と類縁の単離菌株などを用いて解析し、膜脂質がアルミニウム耐性に及ぼす影響について明らかにしていきたい。 【実験 3】 アルミニウムの輸送に関わるトランスポーターの存在の検討: アルミニウムを輸送すると報告されているイネのトランスポーターであるNrat1のホモログとなる遺伝子が検出された。このトランスポーターをこれまでに実施したアンモニウムトランスポーターでの実験と同様に大腸菌内で発現させ、その機能を解析したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度は、新型コロナウイルスの感染拡大により研究室への立ち入りが制限されたことによる実験計画の遅れと、実験に必要なチップやチューブなどのプラスチック器具の調達がままならず、次年度使用が生じた。令和4年度は調達の遅れは解消されたものの、令和3年度の研究計画の遅れにより必要な物品購入も後ろ倒しになったため、再び次年度使用が生じている。令和5年度は研究環境的にも調達状況的にも前年度よりもより多くの実験を実施可能になってきたため、より多くの試薬や消耗品が必要になると思われる。そのため前年度までの未使用分は主に物品費(消耗品)に用いる予定である。
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