研究実績の概要 |
酸性硫酸塩土壌とは、硫化鉄を多く含む海成粘土層が開墾などにより地表に露出し、これが酸化して生じる硫酸が原因となって土壌および周辺水域がpH 1~4という強酸性を呈する土壌である。これまでに申請者は、東南アジアの酸性硫酸塩土壌の湿地に適応する植物を探索し、その根圏からイネの生育促進能をもつ有用微生物群を得てきた。その中で、酸性条件下で植物生育促進能があり、かつ細菌の中で最も高濃度のアルミニウム耐性を示すAL46株を得た。本研究は、AL46株をモデルとして、新たなアルミニウム耐性・酸性土壌適応機構の一端を明らかにすることを目的とした。 AL46株を塩化アルミニウム濃度が0 mM, 20 mMの培地を用いて培養してショットガンプロテオーム解析を実施した。その結果、アルミニウム非存在下より4~16倍も検出量が増加したタンパク質が見いだされ、いくつかは細胞表層構造の構成成分の合成やリン・金属の輸送などに関係する機能を持つことが分かった。具体的には、0 mMに対して20 mMの試料中で4倍以上増加したタンパク質は32個あり、16倍以上増加したタンパク質は8個あった。その中には物質の輸送に関係するタンパク質が多くみられ、中でもリン酸の輸送に関係するタンパク質が複数見つかった。アルミニウム存在下では土壌中のリン酸が不溶化して根からの取り込みが困難となるため、リン酸輸送に関わるタンパク質が検出されたのは興味深い。また、高濃度(90 mM)のアルミニウム存在下でも「4倍以上増加」で3個、「16倍以上増加」で4個が20 mMの条件で検出されたタンパク質と共通して検出され、これらのタンパク質は特にアルミニウム耐性機構において重要な役割を果たすことが期待できた。
|