研究課題/領域番号 |
21K12300
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研究機関 | 埼玉県環境科学国際センター |
研究代表者 |
石山 高 埼玉県環境科学国際センター, 土壌・地下水・地盤担当, 担当部長 (80297621)
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研究分担者 |
柿本 貴志 埼玉県環境科学国際センター, 土壌・地下水・地盤担当, 専門研究員 (00462747)
渡邊 圭司 埼玉県環境科学国際センター, 水環境担当, 専門研究員 (50575230)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 海成堆積物 / 黄鉄鉱 / 環境汚染リスク / 土壌汚染対策 |
研究実績の概要 |
海成堆積物に酸化マグネシウムを7wt%添加し、35℃湿潤条件下で風化試験を実施した。試験に用いた海成堆積物からは0.1mg/L以上の砒素、約0.7mg/Lのほう素、約0.9mg/Lのふっ素の溶出が認められたが、酸化マグネシウムを添加することで、砒素は0.05mg/L、ほう素は0.1mg/L、ふっ素は0.3mg/Lまで溶出濃度が低減することが分かった。ただし、砒素、ほう素、ふっ素の不溶化効果が得られるまでには、2~3日間の養生時間を要することが判明した。これら元素の不溶化効果は長期間維持され、少なくとも風化試験開始から半年を経過した段階でも溶出濃度に変化は認められなかった。 土壌溶出液中硫酸イオン濃度の経時変化から、酸化マグネシウムによる黄鉄鉱の酸化分解抑制効果を把握したところ、風化試験開始から半年間経過した段階では、酸化マグネシウムを添加していない系と比べて硫酸イオン濃度に明瞭な違いは観察されなかった。本試験で使用した海成堆積物は土壌pHが9.5と高く、黄鉄鉱の酸化分解が促進される中性領域までpHが低下するのに非常に長い時間を要するため、試験開始から半年後の段階でも明瞭な違いは認められなかったものと考えられる。本風化試験は継続して実施している。 令和3年度の研究結果から、酸化マグネシウムは海成堆積物の長期・短期汚染リスクを同時抑制できる可能性が確認された。酸化マグネシウムは入手コストが非常に高いため、令和4年度では酸化マグネシウムに代わる環境保全材料の検討を行う。具体的には、炭酸カルシウムを焼成して生成する酸化カルシウムの適用する性について研究を行う。酸化カルシウムを生成するために使用する炭酸カルシウムとしては、水産加工業で廃棄されているホタテの貝殻片が利用できるため、環境保全材料の入手コストを大幅に削減できる可能性が考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
海成堆積物に酸化マグネシウムを添加することで、砒素、ほう素やふっ素の不溶化効果(短期汚染リスク対策効果)が得られることを確認した。この不溶化効果は長期間持続することも確認できた。現段階では、酸化マグネシウムを添加した系と添加していない系で土壌溶出液中の硫酸イオン濃度に違いが認められていないが、他の実験で土壌pHが高いと黄鉄鉱の酸化分解が抑制されるという研究結果が得られているため、酸化マグネシウムによる長期汚染リスクの抑制効果も期待できると考えられる。 以上の進捗状況より、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
酸化マグネシウムは入手コストが高いため、より低コストの環境保全材料について検討を実施する。具体的には、炭酸カルシウムを原材料として選定し、これを一定条件で焼成して生成した酸化カルシウムの適用性について研究する。炭酸カルシウムは、水産加工業で廃棄されているホタテ貝などの貝殻を再利用することができるため、コストの削減に大きく貢献すると期待している。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度では、コロナ禍の影響で学会等がすべてオンライン開催となった。そのため、旅費等の使用実績が非常に少なった。ただし、今年度(令和4年度)からは現地開催の学会も多くなると予想されることから、学会等に積極的に参加して研究成果を発表する。 また、ホタテ貝殻の入手や焼成実験、様々な条件下での風化試験と土壌溶出量試験を行う予定であるため、前年度からの繰越金を活用して、使い捨て型のメンブレンフィルターや微生物解析用キットの購入を進める。
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