研究課題/領域番号 |
21K12300
|
研究機関 | 埼玉県環境科学国際センター |
研究代表者 |
石山 高 埼玉県環境科学国際センター, 土壌・地下水・地盤担当, 担当部長 (80297621)
|
研究分担者 |
柿本 貴志 埼玉県環境科学国際センター, 土壌・地下水・地盤担当, 専門研究員 (00462747)
渡邊 圭司 埼玉県環境科学国際センター, 水環境担当, 専門研究員 (50575230)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 土壌汚染対策 / 海成堆積物 / 長期・短期リスク抑制 / アルカリ性材料 / 微生物不活性化手法 / ホタテ貝の廃棄貝殻 |
研究実績の概要 |
海成堆積物由来の土壌汚染では、含有量は自然レベルであるものの、基準を上回る重金属類の溶出が問題となっている。この汚染は、海成堆積物に含まれるフランボイダル型黄鉄鉱の酸化に伴う土壌の強酸性化(長期汚染リスク)と掘削直後における砒素、ふっ素、ほう素やセレンの溶出(短期汚染リスク)という2つの汚染リスクが原因で発生する。現在、海成堆積物の対策手法としては、遮水工封じ込めや吸着層工法など、黄鉄鉱と酸素や水との接触を遮断するとともに重金属類の溶出を防ぐ方法が採用されているが、これらの方法は多大な労力と時間を要するため、簡便で迅速な対策技術の開発が切望されている。本研究では、微生物の不活性化剤としてホタテ貝の貝殻片(CaCO3)、酸化マグネシウム(MgO)及びホタテ貝の焼成材(CaO)を適用し、覆土処理や遮水シート処理を要しない簡便迅速な対策技術の開発を目指す。 埼玉県内の3地域(中川・荒川低地南部、大宮台地南部の谷底低地)で採取した海成堆積物にCaCO3、MgO、CaOを3~8wt%添加して風化試験(35℃湿潤)を行ったところ、MgOやCaOは、黄鉄鉱の酸化分解抑制(長期汚染リスク抑制)と砒素やふっ素などの不溶化効果(短期汚染リスクの抑制)を同時に抑制できる機能を有することが確認できた。不溶化効果はMgOのほうが優れているが、海成堆積物の種類によっては、入手コストが安価なCaOでも長期・短期汚染リスクの同時抑制効果が得られることが明らかとなった。黄鉄鉱の酸化抑制効果、重金属類の不溶化効果は長期間持続し、風化試験開始後、少なくとも1年近く効果を維持し続けることが明らかとなった。CaCO3は黄鉄鉱の酸化抑制効果は有するものの、重金属類の不溶化効果を得ることはできなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、海成堆積物の長期汚染リスク(黄鉄鉱の酸化分解に伴う土壌の酸性化)と短期汚染リスク(砒素、ふっ素などの溶出)を同時に抑制する手法の開発を試みているが、酸化マグネシウム(MgO)やホタテ貝の焼成材(CaO)を用いることで同時抑制できる見通しが得られた。効果の持続性についても検討した結果、黄鉄鉱の酸化分解が著しく進行すると想定される条件下(35℃湿潤)でも、少なくとも1年近く効果が持続することを確認することができた。以上の結果から、本研究課題はおおむね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度は、CaOによる効果の更なる向上を目指し、より処理コストの安い対策技術の開発を目指す。具体的には、CaOの粒径、焼成条件などについて検討し、風化試験の結果から黄鉄鉱の酸化抑制効果と重金属類の不溶化効果を評価する。CaOは黄鉄鉱の酸化抑制効果は十分に得られているが、砒素の不溶化効果はMgOに比べて低い。粒径や焼成条件を最適化して、不溶化効果の更なる向上を目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
最終年度において様々な条件で風化試験を実施するため、試験に用いる実験器具を大量に購入する必要がある。そのため、次年度使用額が生じた。また、研究成果を学会や論文で公表する際の諸経費としても使用する。
|