研究課題/領域番号 |
21K12314
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研究機関 | 滋賀県立大学 |
研究代表者 |
谷本 智史 滋賀県立大学, 工学部, 准教授 (50303350)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | キトサン / 炭酸カルシウム / バイオミネラリゼーション / バイオマス / 薬物担体 / pH応答性 / 有機無機ハイブリッド |
研究実績の概要 |
キチン・キトサンはセルロースに次ぐバイオマス資源として期待されているが、材料としての応用研究はあまり進んでいない。そこで我々は、新しい材料としての可能性を創出するため、「キトサンの微粒子化」、「無機物質とのハイブリッド化」、「薬物担体としての新規メソッドの探索」を目的として研究を始めている。 今年度においては、マイクロメートルスケールのキトサン微粒子および、ミリメートルスケールのキトサンビーズの調製方法に関する基礎的研究が大きく進展した。マイクロ微粒子においては、1回の手順で調製できる粒子量を倍増することに成功した。今後の研究の展開に大いに役立つ成果である。ミリスケールビーズにおいては、ビーズ調製時の条件確立に注力し、球形ビーズを形成可能な濃度条件などを概ね確立することに成功した。 また、ミリスケールビーズにタンパク質を封入することに成功し、ペプチド・タンパク質系薬剤の担体としての活用に向けた検討ができた。この研究で得られたキトサンビーズをタンパク質運搬体として用いる際に、pH応答性を示すことも見出すことができた。 マイクロスケールのキトサン微粒子に対しては炭酸カルシウムとの複合化を検討し、粒子形状を保ったまま、外殻に無機成分を付着させることに成功し、制御された構造を有する複合微粒子を得ることに成功した。 今年度、得られた成果は本研究課題の基盤となる知見であり、多面的に研究を進めていく上で、重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた「炭酸カルシウムの自発析出におけるバインダー高分子の効果の解明」に関しては、生分解性のポリグルタミン酸をバインダーとして用いたコアシェル粒子調製を試みた結果を得ることができた。ポリペプチドの種類を複数、試すことはできなかったが、ポリグルタミン酸を用いたときに炭酸カルシウムの結晶構造が変わることが明らかになった。 さらに2021年度は令和4年度以降に予定していた、「キトサンコア微粒子の粒径制御」について取り組み、ミリサイズのキトサンビーズを調製し始めた。堅牢なビーズの調製条件と様々なpH環境下での形状維持特性に関して調査した。 以上のように、先行して着手した内容もあり、概ね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
ミリメートルサイズのキトサンビーズの系において、キトサン自体の溶解特性からは考えられないような堅牢性が観察された。これは天然由来多糖であるキトサンに材料としての新たな用途を生み出すものである。予想外の結果で有ったため、この部分に関して、詳細に調査する必要がある。令和4年度はこの部分にエフォートを多めに配分したいと考えている。また、マイクロメートルサイズのキトサン微粒子の系においては、複合化させる無機鉱物の種類をカルシウム塩からシリカへと幅を広げてみたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度に現有の走査型電子顕微鏡が故障に見舞われ、その修理のため想定外の支出があった。この顕微鏡は粒子の観察に欠かせないものであるため、修理はやむを得ないものであった。この支出が使用予算の多くを占めており、その結果として、当初の支出予定を変更することとなった。 粒子の安定した調製のために必要な条件管理を検討している。令和4年度は粒子の調製手順に温度調整を取り入れる検討を行う。したがって、水温調整のための機器を追加購入することを考えている。
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備考 |
継続している研究テーマについて動画で紹介しています。
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