研究課題/領域番号 |
21K12316
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研究機関 | 熊本高等専門学校 |
研究代表者 |
富澤 哲 熊本高等専門学校, 生産システム工学系BCグループ, 講師 (90634709)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 生分解性 / バイオマス / カーボンニュートラル / プラスチック |
研究実績の概要 |
ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)はバイオマス資源である糖や植物油から発酵生産可能な生分解性プラスチックである。PHAの融点と熱分解温度は近く、溶融成型中に著しい性能低下が生じるため、ほとんど利用されていない。一般に、主鎖に二重結合や芳香環を有するモノマーはプラスチックの熱物性を飛躍的に向上させる。本研究では主鎖に二重結合を含むバイオプラスチックを発酵生産し、その生産物の熱物性を評価することを目的とした。PHAの溶融成型性を改善するため、プラスチック原料のバイオマス資源化に貢献できる。しかし、現在までに主鎖に二重結合を含むバイオプラスチックの発酵生産は実現されていない。そこで、PHAのモノマー成分の中で主鎖方向に長い6-ヒドロキシヘキサン酸(6HHx)に着目した。主鎖の基質特異性が低いPHA合成酵素であれば、改変により主鎖に二重結合を含むモノマーにも活性を示す可能性があると考えた。はじめに6HHxを重合する酵素を取得する、続いて酵素の改変により主鎖に二重結合を含むバイオプラスチックの発酵生産を目指すこととした。 令和3年度は6HHxを含むPHAを生産する微生物の培養と取得に取り組んだ。微生物バンクより入手したBacillus属細菌にε-カプロラクトン(ε-CL)または6-ヒドロキシヘキサン酸ナトリウム(6HHxNa)を与え、6HHxの蓄積をGC-MS(ガスクロマトグラフィー-質量分析装置)とNMR(核磁気共鳴法)により評価した。使用したBacillus属細菌でも6HHx成分を含むPHA生産が可能であることが示唆された。また、6HHxを含むPHA蓄積微生物を取得するために6HHxNaを炭素源とした単離実験を行った。6HHx成分を蓄積する微生物は取得できなかったが、6HHxより炭素数が2つ少ない4-ヒドロキシブタン酸(4HB)を蓄積する微生物の取得には成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は主鎖に特徴的なモノマーである6HHx成分を含むPHAの発酵生産を行った。6HHxの蓄積はBacillus属細菌の一部やメタン資化細菌の一部にて報告されていたが、いずれの菌株も入手または培養が難しかった。微生物バンクより入手したBacillus属細菌を用いて、培養条件を検討し6HHxの蓄積確認を行った。抽出したPHAを分析した結果、6HHx成分の蓄積が示唆された。この菌株のPHA合成関連遺伝子は、変異導入のベースとして使えることがわかった。また、メタンよりも扱いが容易なメタノールと6HHxNaを炭素源として、6HHxを含むPHA蓄積微生物の取得を試みた。6HHxを蓄積する微生物は取得できなかったが、4HBを含むPHA蓄積微生物の取得には成功した。メタノールを炭素源としたPHA蓄積微生物の単離手法は確立できたことから、本手法を継続すれば6HHxを蓄積する微生物の取得が期待できる。これらの状況からおおむね順調と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
Bacillus属細菌よりPHA合成酵素遺伝子と6HHxモノマー(PHA合成酵素の基質)を供給する酵素のクローニングを行う。続いて、大腸菌細胞を用いた6HHx成分を含むPHAの発酵生産を試みる。6HHx成分に対して高い活性を示すPHA合成酵素を取得するために、6HHx成分を蓄積するメタノール資化細菌の取得は継続する。6HHxの蓄積が確認できた場合はPHA合成酵素をクローニングし、Bacillus属細菌より取得した6HHxモノマーを供給する酵素遺伝子を含む大腸菌へ導入する。また、主鎖に二重結合を含むモノマーの化学合成を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
ガスクロマトグラフィー関連物品の購入を計上していたが、別予算での購入が可能となった。そこで培養関連機器の購入を進めていたが、校舎改修による研究室の移転が決定したため購入を見送った。次年度は培養関連機器の購入し、培養効率の向上する。また、遺伝子実験と基質の合成実験を行うため、予定通り関連試薬の購入を行う。
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