研究課題/領域番号 |
21K12322
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研究機関 | 福島大学 |
研究代表者 |
望月 翔太 福島大学, 食農学類, 准教授 (90737777)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 野生動物管理 / 市街地出没 / 河川管理 / アンダーユース / 人口減少社会 |
研究実績の概要 |
野生動物が市街地に出没する際に、河川が利用されていると考えられている。これは、近年の河川の樹林化や周辺の土地利用の変化が原因であると推察されている。そこで、野生動物が移動経路として利用しやすい河川環境の特性はなにか、という問いのもと本研究を進めた。 本研究では、河川を中心とした周辺の景観構造に対する野生動物の行動特性について評価する事を目的とする。河川沿いに野生動物の目撃情報が多いことから、どのような河川環境や周辺の土地利用形態だと野生動物の利用頻度が増加するかを調査する。また、野生動物が移動経路として利用する河川周辺の土地利用について、過去から現在までの変化を評価し、どのような変化が、野生動物の市街地出没に影響を与えたかを明らかにした。 2021年度は、センサーカメラを用いて、ツキノワグマの河川環境の利用について、撮影頻度や時間帯、行動特性の観点から評価した。調査地は、福島市と喜多方市の2か所とした。福島市は荒川沿いと小川沿いで、過去にツキノワグマの出没を抑制するための河川環境の整備が実施されたエリアである。喜多方市のエリアは、ツキノワグマの出没が確認された東山周辺を対象とした。また、カメラ調査だけでなく、福島県警で集約されているツキノワグマの目撃情報についても、地理情報システム(GIS)を用いてデータベース化した。目撃情報をもとに、出没と河川周辺の環境との関係性をモデル化した結果、人工林と河川から近いエリアでツキノワグマの出没が多いことがわかった。その結果をもとに、ドローンによる空中写真を用いて、河川周辺の土地利用を把握した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
センサーカメラによる野生動物の調査と、ドローンの空撮を用いた河川周辺の土地利用の把握は順調に進展している。また、ツキノワグマの目撃情報をデータベース化することにより、市街地出没に関係する環境要因について、明らかにすることができた。これらの情報をもとに、今後の研究を展開していく予定である。 一方、イノシシについては、センサーカメラでの調査が順調にはいかなかった。2021年度は、全県でイノシシの捕獲頭数が減少しており、センサーカメラによる調査でも、解析に必要なサンプル数を得ることができなかった。2022年以降も、引き続き調査を進める。
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今後の研究の推進方策 |
里山環境の利用・管理の縮小(アンダーユース)による耕作放棄地や河川の樹林化は野生動物の生息地利用に大きく影響する事が予想される。本研究は、近年増加傾向にある野生動物の市街地出没に着目し、河川の樹林化や周辺の土地利用の変化が野生動物の移動に対し、どのように影響しているかを明らかにする事を目的とする。 計画している具体的な研究項目は、①過去から現在までの河川環境の変化、および周辺土地利用の遷移に関するGISデータの構築、②野生動物の河川環境の利用形態と市街地出没のリスク評価、の2つである。 2022年度以降の研究の方針として、福島市の荒川沿いと小川沿いの実験区域において、過去の野生動物の出没パターンと、樹林を伐採した後の出没パターンを複数年比較し、市街地出没に対する移動経路を遮断する河川整備の効果について評価する。 また、市街地出没のリスクを考慮し、どのエリアをどのように管理し、各地域で野生動物の出没に対してどんな対策を実施したら良いのか、土地利用戦略を加味した野生動物の出没ハザードマップを作成する。また、ハザードマップをもとに自治体や管理事務所等へ河畔林の管理方法について提案する。 福島県では、2022年度からツキノワグマの保護管理計画が更新され、その中にゾーニングの考え方が盛り込まれた。どのエリアでどのようにツキノワグマを管理していくか、地理情報を用いて明示することが必要となる。福島県全域のゾーニングについて、本研究の成果を活かして整備していく。
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