野生動物が市街地に出没する際に、河川が利用されていると考えられている。これは、近年の河川の樹林化や周辺の土地利用の変化が原因であると推察されている。そこで、野生動物が移動経路として利用しやすい河川環境の特性はなにか、という問いのもと本研究を進めた。 本研究では、河川を中心とした周辺の景観構造に対する野生動物の行動特性について評価する事を目的とする。河川沿いに野生動物の目撃情報が多いことから、どのような河川環境や周辺の土地利用形態だと野生動物の利用頻度が増加するかを調査する。また、野生動物が移動経路として利用する河川周辺の土地利用について、過去から現在までの変化を評価し、どのような変化が、野生動物の市街地出没に影響を与えたかを明らかにした。 これまで、センサーカメラを用いて、ツキノワグマの河川環境の利用について、撮影頻度や時間帯、行動特性の観点から評価した。調査地は、福島市と喜多方市の2か所とした。また、カメラ調査だけでなく、福島県警で集約されているツキノワグマの目撃情報についても、地理情報システム(GIS)を用いてデータベース化した。目撃情報をもとに、出没と河川周辺の環境との関係性をモデル化した結果、人工林と河川から近いエリア でツキノワグマの出没が多いことがわかった。その結果をもとに、ドローンによる空中写真を用いて、河川周辺の土地利用を把握した。 最終年度は、福島市と喜多方市のそれぞれの調査地において、季節ごとや年ごと(大量出没に注目)に出没に関する統計モデルを構築した。特に、喜多方市ではドローンによる空撮を多く実施して、広域の画像データを取得し、3次元情報として取りまとめた。地形の微細な起伏などから、ツキノワグマが出没しやすいルートを特定した。
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