研究実績の概要 |
気候変動により頻発化・激甚化する豪雨に対する大規模な自然攪乱の影響とその後実施される大規模な河川改修による人為的攪乱は、中小河川の魚類群集に大きなダメージを及ぼし、魚類の存続や多様性に負の影響を及ぼすことが危惧される。本研究は、2017、2020年に甚大な豪雨災害が起きた筑後川及び球磨川流域の支流中小河川を対象に、豪雨による自然攪乱およびその後大規模に実施される災害復旧工事が魚類に及ぼす影響に関して、攪乱外力や河川生態系がもつレジリエンス維持機構に着目し解明し、これを踏まえ気候変動下における魚類群集保全のための方策を明らかにすることを目的としている。 初年度である2021年度は、対象災害時の攪乱外力として降雨強度、被災前後の地形変化量(浸食・堆積)、レジリエンス要因として、ダム・ため池、水系ネットワーク、流域面積等に関するデータを収集し整理した。降雨強度に関しては最大1,6,12,24時間雨量を算出し、地形変化量に関しては、災害前後のDEMを活用しGISを用いて評価した。また、攪乱強度に関して、SPI(Specific Stream Powe)に着目し算出した。残存魚類に関しては、球磨川流域における魚類分布を環境DNA分析により取得した。両流域において攪乱外力と残存魚種に関係性がみられること、湧水、ダム・ため池、河川-用水路のネットワークが災害に対してレジリエンス要因として関与している可能性を示唆するとともに、次年度に行う統計的解析手法について検討した。
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